辛口コラムニストが選ぶ2021年「連ドラ」ベスト3 1、2位は冒険と実験が山盛りの良作

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やっちゃえフジテレビ

アナ:そもそも「大豆田とわ子」が放送されていたフジ系・火曜夜9時台のドラマ枠はなくなってしまい、関西テレビ制作の連ドラは月曜夜10時台に移動しました。

林:その月10枠の幕開け作品になった「アバランチ」(10月期/8・6%)は、ストーリー展開から脚本家の顔ぶれまで迷走していると批判されたけれど、あの迷走は試行錯誤の現れでもあって、ワタシは見守ってました、生温かい眼で。だから悪口を言う気にはならない。実際、後半はけっこう楽しめたし。

アナ:あれ、去年の連ドラベスト&ワーストに続いて、また林さんが優しくなっている……。

林:フジの看板枠たる月9は今年、「監察医 朝顔」(1月期/12・0%)に「イチケイのカラス」(4月期/12・6%)、「ナイトドクター」(7月期/11・2%)、「ラジエーションハウスII」(10月期/10・7%)の4本で、数字は見事に揃えてきたけれど、中身は警察モノか医療モノ、あるいはそのハイブリッドばっかり。「相棒」「緊急取調室」「ドクターX」「科捜研の女」あたりを繰り返し続けてきたテレ朝と同じくらい保守的になってます。

アナ:あ、ホントだ。フジの警察モノ・医療モノのほうが、想定視聴者の年齢層が多少若いという差はありますが。

林:保守的だというテレ朝でさえ、「科捜研」の打ち切り説が流れたり、「相棒」の水谷豊の相方の7年ぶりの交代を発表したりと、変わろうとしてる。だもの、フジにももっともっと変わってほしいのよ、ワタシとしては。

アナ:よぉくわかりました。いや、今回も連ドラ年間ベスト&ワースト、ありがとうございました。

林:ありがとうございました!

野心的な「カムカム」

アナ:……あれ、いいんですか、このまま終わっちゃって。今年はないんですか、ベスト&ワースト発表完了後の飛び込みの蛇足。

林:やっていいの? 今年だったら、ベスト&ワーストの選定対象外のNHKのドラマ、たとえば「オリバーな犬、(Gosh!!)このヤロウ」とか「カムカムエヴリバディ」の野心的な実験精神を褒め讃えた挙げ句、一転、放送税(受信料)で実入りが安定してる国営放送が民業(民放)を圧迫してるのはケシカランとか、みなさまからの受信料で制作した番組なんだから放送終了後には全部ネットでタダ見し放題にしろとか、いつもの話の蒸し返しになるよ。

アナ:ドラマ10枠の「オリバーな犬」を激賞し、返す刀でNHKをメッタ斬り……というお話は、確かに前回うかがいましたね。朝の連続テレビ小説の「カムカムエヴリバディ」が野心的だとか実験的だとかいうのは初耳ですが、こちらは新年も放送が続きますから、また別の機会にしましょうか。

林:そうしましょう、そうしましょう!

アナ:あれ、いつもならそう言われると「カムカム」の話をダ~ッと始めるのが林さんなんですが……やっぱりまだ、ドラマの世界のコロナ禍は終わっていませんね、林さんが天の邪鬼ぶりを封印しているなんて。

林:いや、このあと早く打ち上げに繰り出したいだけなんだよ。第6波の足音が聞こえ始めてきたから今のうちに呑んどかないと。さ、行こ行こ!

アナ:……。

【ベスト篇、了】

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

デイリー新潮編集部

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