辛口コラムニストが選ぶ2021年「連ドラ」ベスト3 1、2位は冒険と実験が山盛りの良作

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林:スタッフやキャストが手を抜かず、やっつけではないイイ仕事をしていた点は第3位に選んだ2本と共通しているけれど、その上でさらに遊びとか冒険とか実験が山盛りだったのが第1位・第2位の2本。この2本のどこがどういいのかという話は、上半期の連ドラ総まくりでさんざん話したので、もう繰り返しませんが。

アナ:なるほど。

林:たとえ話ばっかりで申し訳ないけれど、文学賞を例に取れば、第3位の2本は直木賞・山本賞で、第1位・第2位の2本は芥川賞・三島賞とも言えるかな。これは純文学が上でエンタメが下とかいう馬鹿げた序列とはまったく無関係で、誰もがエンタメエンタメ、つまりは商売商売へと流れ続ける中、どんどん地盤沈下してる純文にこそ光を当てようよ……という話です。科学技術の分野でも、基礎研究を育てないと応用研究まで痩せてくるって、ノーベル賞レベルの研究者たちが嘆いてるでしょ。

なぜ「大豆田」が第1位に?

アナ:ふむふむ。では、「大豆田とわ子」が第1位に、「俺の家の話」が第2位になった理由は何でしょう。その逆でもよかったかもしれませんし、あるいは2本そろって同着1位という手もあったかと。

林:実際、迷ったわけですが、ドラマとしてのブッ飛び度が「大豆田」のほうが強めに感じられたことがまずあって、でも、最後は局の優劣で決めたな。

アナ:局の優劣? 「大豆田とわ子」がフジ系で「俺の家の話」がTBS系で……という局の話ですか?

林:そうそう。簡単に言っちゃえば、わりと果敢に試行錯誤して古い「ドラマのTBS」をかなり捨て去って新しい「ドラマのTBS」に化けつつある局が、またひとつ積み重ねた快作を褒めるより、まだまだおっかなびっくり、かつ、とんちんかんな改革ばかりが目立って、もがき苦しんでる局が珍しく生み出した怪作のほうを褒めたい気分だったのよ。

アナ:一種の判官びいき……ですね。

林:そうかもしれない。でも、フジを持ち上げてTBSを落とすことを目指したわけじゃまったくありません。大きかったのは、「俺の家の話」も「大豆田とわ子」も数字(視聴率)は評判ほどにはよくなくて、それでもTBSからは「俺の家」みたいな作品がまた送り出されてくると期待できる一方、フジからはもう「大豆田」みたいな作品は出てこないかもという危惧があるという違い。ドラマにはまだ未来があると思わせてくれるような作品がフジからも出てきてほしいのよ。

アナ:確かに。残念ながら下半期の連ドラを眺めてみても、林さんの期待と危惧が現実のものになっている感があります。ルネサンスは来なかった……

林:まぁね。

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