認知症予防に「ケトン体」活用食事術とは 「白米の大食」は短命リスクが

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白米の大食をしない

 前述したメアリー・T・ニューポート医師は、ココナッツ油などに含まれるMCT(中鎖脂肪酸)を摂取することによってアルツハイマーが改善した、という研究結果を発表しています。患者さんに1日に約30グラムのココナッツ油を摂取させたところ、時計の絵が正確に描けなかった人が2週間で描けるようになったというのです。しかし、恐らく日本人が毎日30グラムのココナッツ油を摂るのは消化の関係で難しく、下痢になってしまうでしょう。摂取するにしても、小さじ1杯程度を飲むか、サラダに少しかける程度から始めるべきかと思います。

 長寿村の人の食事、穀物と野菜中心の食生活も参考になると思います。約50年も前に東北大学名誉教授の近藤正二氏が書かれた『日本の長寿村・短命村』という本をご存じの方もいると思います。アンチエイジングに関する本でこれを超えるものはない、と断言できます。その中で、近藤氏は長寿の秘訣について三つの要素を挙げています。それは、「白米の大食をしない」「動物性たんぱく質を大食しない」「野菜・海藻・大豆を少しずつ食べる」というものです。このような食生活では、体内のケトン体濃度はわずかしか増加しません。ただ、ケトン体濃度はこれで十分なのです。結局のところ健康長寿の秘訣は、ケトン体を排除するとかケトン体を5ミリモルまで大幅に増加させる、といったことではないのでしょう。

 無理をせずに継続でき、肉食ばかり、菜食ばかりに偏らず、自分の好きなものを取り入れた食生活を実践するところから始めるのがいいのだと思います。

佐藤拓己(さとうたくみ)
東京工科大学応用生物学部教授。1961年岩手県生まれ。東京大学農学部畜産獣医学科卒業。京都大学大学院医学研究科修了。博士(医学)。専門は神経科学、抗老化学。著書に『脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命』(光文社新書)など。

週刊新潮 2021年12月23日号掲載

特集「『認知症』を防ぐ『ケトン体』活用食事術」より

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