認知症予防に「ケトン体」活用食事術とは 「白米の大食」は短命リスクが

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多くの日本人の血糖値は安定していない

〈こうした背景を踏まえた上で、佐藤氏は「ブドウ糖とケトン体のハイブリッド方式で脳にエネルギーを与えて認知症を防ごう」と提唱している。〉

 現在でもしばしば、「脳が疲れたから甘いものを食べてブドウ糖を補給しよう」といった言説を耳にします。「脳のエネルギーはブドウ糖のみ」との考えに基づく言説ですが、これはある条件を満たした場合にのみ正しいといえます。その条件は、「血糖値が安定している」ということ。しかし、多くの日本人はその血糖値が安定していません。それは、糖質を過剰に摂取しているからです。

 米やうどんなどの糖質をたくさん摂ると、体内でインスリンが分泌されます。インスリンは分泌量の微調整が難しいため、血糖値が一気に下がります。食後少し経つと眠くなったり、気分が悪くなったりする、ということがありますが、これは血糖値の低下が原因なのです。脳がエネルギー不足になっているのです。そんな時に必要になるのが、バックアップとしてのケトン体です。ケトン体とは生物の体内で脂肪酸をもとに作られる物質で、肝臓などで生成されます。

 残念なことに、ケトン体については極端な見方が存在しています。糖質の摂取量を1日数十グラム以下にしないとケトン体が増加しないとして、極端な糖質制限を推奨する意見をよく耳にします。しかし、ブドウ糖が脳にとって主たるエネルギーである以上、その摂取を減らし過ぎることは当然ながら神経科学的に見ても推奨できません。

脳を「ハイブリッド」で稼働させるために

 ケトン体はブドウ糖と同様の自然なエネルギー源です。例えば、ヒトの妊娠後期の胎児は70%のエネルギーを脳の形成につぎ込んでいます。その半分以上がケトン体、残りがブドウ糖によるものです。ケトン体は、全てのヒトが母親の胎内にいる時からたっぷりと体内に蓄え、成長する間も、成人してからもずっと、量の多少はあれど、自らの体内で作り続けているものなのです。

 私が言いたいのは、体内のケトン体濃度を少しだけ上げて脳を稼働させることで、脳のエネルギー不足を解消しよう、ということです。ブドウ糖だけで動いている状態を「ガソリン車」に例えるなら、ケトン体も用いるのは「ハイブリッド車」のようなものです。

 では、脳を「ハイブリッド」で稼働させるためにはどうすればいいのか? 答えは簡単です。糖質過剰な食生活を是正するだけでいいのです。白米がおいしいからと2杯も3杯も食べていたのを1杯にして、その分おかずを増やしてみてください。欲を言えば、食事と食事の間隔を無理のない範囲で空け、日々の中に多少、空腹の時間を作るのがいいと思います。

 3食ともしっかりと主食を食べ、間食も摂る。こうした食生活をしている人の体内のケトン体の濃度は0.1ミリモル程度でしょう。私はケトン体の濃度を0.2~0.5ミリモルにすることをおすすめしています。

 その数値にもっていくにはどうしたらいいか。それは、緩やかな糖質制限をイメージすると分かりやすいかもしれません。例えば、朝は無塩バターを溶かしたバターコーヒー。昼はゆで卵にバナナ。夜は茶碗1杯のごはんと、肉や野菜など多めのおかずを食べる。軽い運動を行うことも、「ハイブリッド」にしていくためにはおすすめです。

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