認知症予防に「ケトン体」活用食事術とは 「白米の大食」は短命リスクが

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エネルギー基質であるケトン体

 ニューロンへのブドウ糖の取り込みに支障をきたすと当然、問題が起こります。具体的には、短期記憶に支障が出ます。例えば、「今日の朝、何を食べましたか?」と聞かれて答えられない、といった症状です。よく、認知症になると、昔のことは覚えているのに、「今日何をしていたか」が思い出せなかったりします。これは短期記憶をつかさどる海馬の機能が弱まっているからなのです。

 では、その危機から抜け出す方法を探ってみましょう。エネルギー不足に陥ったニューロンでは以下のようなことが起こっていると考えられます。

(1) ニューロンはまだ死んだり傷ついたりしていない

(2) 記憶のデータが来るのを待っている状態

(3)インスリンとGLUT4の情報伝達がうまくいかなくなったため、ブドウ糖が取り込めなくなり、エネルギー不足になっている

(4)ブドウ糖の取り込みはインスリンに依存するので、ブドウ糖濃度を上げてもあまり効果がない

(5) ブドウ糖以外のエネルギー基質があれば、ニューロンの機能が復活する可能性が高いと考えられる

 そこで、“もう一つのエネルギー基質”であるケトン体の出番、というわけです。重要なのは、問題が「ニューロンのエネルギー不足」に留まっているうちに手を打つことです。

 認知症の約7割を占めるアルツハイマー型認知症では、アミロイドβというタンパク質がニューロンに沈着して変性を進行させるという「アミロイド仮説」が知られています。「アミロイドβの沈着」と「エネルギー基質の不足」は互いに病の進行を助長するので、この二つが重なった場合には、負のスパイラルに陥りやすい可能性があります。

ケトン体含有食のマウスは認知能力が増強

 では、“もう一つのエネルギー基質”であるケトン体を補充することは、アルツハイマー型にも有効なのでしょうか? 実は、多くの論文が「有効である」と報告しています。例えば、メアリー・T・ニューポート医師が『アルツハイマー病が劇的に改善した!』(SBクリエイティブ)という本で報告している事例は、「ケトン体を少しだけ増やしてエネルギー不足を解消すれば、アルツハイマー型認知症であっても進行を遅らせることができる」可能性を示しています。また、ケトン体の効果はマウスの実験でも証明されています。アルツハイマー病モデルのマウスに、

A 通常食(炭水化物1:タンパク質1:脂肪1)

B 糖質過多食(炭水化物7:タンパク質2:脂肪1)

C ケトン体含有食(比率は通常食と同じで、ケトン体を0.5グラム/キログラム含有)

 を与え、認知能力を比較したところ、通常食や糖質過多食のマウスでは認知能力が時間を経るにつれ低下したのに対し、ケトン体含有食のマウスでは認知能力が増強されたのです。

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