認知症予防に「ケトン体」活用食事術とは 「白米の大食」は短命リスクが
4年後に患者の数が700万人を超えるといわれる認知症。誰にとっても「ひとごと」とはいえない深刻な病だが、日々の食事内容を少し変えるだけで魔の手から逃れられる可能性があるという。東京工科大学の佐藤拓己教授が提唱する、「ケトン体」活用食事術とは。
認知症、特にアルツハイマー型認知症については、「病態が進行し始めたら、薬で進行を少しだけゆっくりにするしかできない」「ほとんどあきらめるしかない」と思っている人が多いかもしれません。果たして本当にそうでしょうか。
〈そう語るのは、東京工科大学教授で『脳の寿命を延ばす「脳エネルギー」革命』(光文社新書)の著者、佐藤拓己氏である。佐藤氏の主な研究対象は脳と体の「抗老化」、すなわちアンチエイジングだ。〉
多くの研究者は、認知症が脳の海馬にあるニューロン(錐体細胞)のエネルギー不足から始まると考えています。ニューロンとは、見たものや聞いたものを伝達したり、記憶したりする重要な役割を担っている神経細胞のことです。
ではなぜ海馬のニューロンがエネルギー不足になるのでしょうか?
人体でも特にエネルギーを必要とするニューロン
手始めに、インスリンの作用から見ていきましょう。インスリンは血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を下げるホルモンです。体細胞は、ブドウ糖の取り込み口としてGLUT4というタンパク質を持っています。このタンパク質には、インスリンがある時だけ、ブドウ糖の取り込み口をオープンにする(開く)という機能があります。インスリンが体細胞に到達して受容体に結合すると、GLUT4が開口し、細胞へのブドウ糖の取り込み量が増加します。そのため、体内のインスリン濃度が上がると、血中のブドウ糖が減少、つまり血糖値が急速に低下する、ということが起こるのです。このインスリンとGLUT4の間のどこかで情報が正常に伝わらなくなることなどが原因で発症するのが、2型糖尿病です。ただ、実際には、脳以外の体細胞では、少しくらいブドウ糖の取り込みがゆっくりになったところで、すぐには重大な問題を引き起こしません。
ところが脳において、特に海馬のニューロンでは、全く違うのです。なぜなら、必要になるエネルギー量がケタ違いに大きいからです。ちなみに、ヒトが消費するエネルギーのうち、脳だけで約23%を占めています。その脳の中でも、ニューロンは特にエネルギーが必要なのです。
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