辛口コラムニストが選ぶ2021年「連ドラ」ワースト3 2位「レンアイ漫画家」、1位は意外な高視聴率作品

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それでも視聴率はよかった

林:メインディッシュである「日本沈没」の世界をじっくり味わいたいのに、目の前で小手先のテーブルマジックを次々披露されて気が散る。そういう色ものレストランみたいな脚本でした。肝心のニッポンが沈むメカニズムにしても、原作由来のプレートテクトニクス理論に無理筋な温暖化ネタを上乗せして台なし。

アナ:あのCOMS(コムス)という海底資源採掘事業の設定は、科学技術やSFに疎い私にも薄っぺらに思えました。

林:まぁ、役人モノへの矮小化とか設定の現代化とかは脚本家ひとりじゃなく制作サイドが総出でやらかしたんだと思うし、そもそも脚本家選びも制作の責任。これまでSFを手掛けた形跡のない橋本を大『日本沈没』のドラマ化に引っ張ってくること自体、製作者たちがSFをナメていた証拠だよ。同じ過ちは06年の映画の「日沈本没」でもやらかしていたのに。もちろん、ハナっからSFやるつもりなんてなかったとしか思えないけど。

アナ:2021年の連ドラワースト3で他に挙げていただいたドラマは、林さん風に言えば“作品としてのみならず商売としても失敗していた低視聴率番組”ばかりでしたが、ワースト1位の「日没沈本」は、全話平均の視聴率が「ドクターX」(10月期/テレ朝系/木曜ドラマ/16・47%)に次ぐ年間2位です。

林:SFとしては破綻しててもドラマとしては評価されるとか、作品としては失敗しても商品としては成功するとか、そういう例は珍しくないし、たとえ「日没沈本」でもそれがヒットして原作の『日本沈没』にまた注目が集まることは歓迎します。ただ、「王様は裸だ!」とだけは叫ばせてもらうよ。

アナ:問題を指摘するのに3日はかかるというのが、林さんの評価ですからね。

「シン・日本沈没」を撮れ

林:『日本沈没』を「シン・ゴジラ」と「半沢直樹」のテイストで映像化しようという安直さが泣けたし、特撮も安かったし、演技未満の何かを披露して、ただでさえ薄い現実感をさらに薄める出演者もいた。あのドラマを海外に輸出しろとワタシが命じられたら、少なくとも特撮はあれこれやり直すし、ウエンツ瑛士と中村アンの出演シーンも別の役者で差し替えるよ。

アナ:あのおふたりについては霞が関のキャリア官僚というキャスティングに無理があるという意見が出ていましたし、特撮についても自動車が道路の右側車線を走っていたといった指摘が聞こえました。

林:撮り直しの予算がないなら、安特撮や芝居もどきは全部カット。それもできないなら……セリフを外国語に吹き替えるときに、せめてナレーションの原稿だけは全部書き直すな。安い特撮や下手な芝居(未満の何か)、嘘くさい設定、小出しに出てきては尻すぼみに終わるエピソード、その他いろいろにいちいちナレーターがツッコミを入れるコメディーにしちゃう。

アナ:ツッコミどころには事欠きませんね。個人的には田所博士役の香川照之さんの怪演シーンも吹き替えを想像すると笑えます。

林:ホントは『日本沈没』で笑うのなら筒井康隆の『日本以外全部沈没』だけで充分なはずなんだけどね。ああ、心から乞い願い奉るよ──なにとぞ、どうかなにとぞ、「シン・日本沈没」を撮りたまえ、庵野大明神!

アナ:さぁ、この後は2021年の連ドラベスト3の発表です!

【ワースト篇、了】

林操(はやし・みさお)
コラムニスト。1999~2009年に「新潮45」で、2000年から「週刊新潮」で、テレビ評「見ずにすませるワイドショー」を連載。テレビの凋落や芸能界の実態についての認知度上昇により使命は果たしたとしてセミリタイア中。

デイリー新潮編集部

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