辛口コラムニストが選ぶ2021年「連ドラ」ワースト3 2位「レンアイ漫画家」、1位は意外な高視聴率作品
「TOKYO MER」で帳消し」
林:でも、「レンアイ漫画家」に鈴木亮平というキャスティングは今年最高、いや最低のミスキャストだったと思うよ。実写版「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」(ドラマ版が09年・TBS系、映画版が11年・TBS制作)の香取慎吾とか、映画版「課長 島耕作」(92年・フジテレビほか制作)の田原俊彦、いやいや、ドラマ版「ブラック・ジャック」(81年・テレ朝系・松竹制作)の加山雄三まで思い出しちゃうような配役で、もはや事故レベル。
アナ:不思議なキャスティングではありましたよね。「レンアイ漫画家」の場合、そもそも原作のコミックスでは主人公は女性でしたし。
林:それをわざわざ男に変えて、しかもその役を鈴木に演らせる。どんだけ倒錯した企画なんだよ、と。初主演映画にして彼が大いに顔を売った「HK 変態仮面」(13年)での鈴木は見事に変態だったけれど、マッチョな変態仮面に鈴木亮平というキャスティングはストレートでまっとうだった。
アナ:本当に適役でした、あれは。
林:民放連ドラ初主演だった「レンアイ漫画家」が大コケした後、続く「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(7月期/TBS系・大映テレビ制作/日曜劇場/13・8%)が大当たりしたのは鈴木にとっても、所属のホリプロにとっても、本当にラッキーだったと思うね。
アナ:確かに。最終回の視聴率が19・5%まで伸びた「TOKYO MER」は記録にも記憶にも残るドラマになって、一方、その直前の「レンアイ漫画家」はもはや遠い過去のような印象さえあります。
林:同じ鈴木亮平という素材から「レンアイ漫画家」をヒり出すフジと「TOKYO MER」を生み出すTBS。ドラマの作り手としての局の優劣が残酷なくらい露呈したとも言えますな。
ワースト第1位は
アナ:そしていよいよ2021年連ドラワースト3、第1位ですね。
林:では発表します。映えある、いや、蠅のたかるワースト第1位は……
●「日本沈没―希望のひと―」(10月期/TBS系/日曜劇場/15・8%)
……です。
アナ:今年の連ドラで最大にして最後の話題作という印象でしたが、林さんセレクションではワーストのほう、しかも第1位に入ってしまいましたか、「日本沈没」。
林:いや、ワタシだって初回から最終回2時間スペシャルまでちゃんと全部見ちゃったのよ。箸にも棒にもかからない駄作というわけではなかったし、ニッポンが坂の下の糞めがけて転がり落ち続けてきたことが明々白々になった今、日本が沈むというモチーフを世に示すことにも大いに意味があったと思う。だがしかし、でもされど、残念度&がっかり感の深さは今年最大にして最高でした。
アナ:それだけ事前の期待が大きかったと。
林:う~ん、ちょっと難しいところだなぁ。小松左京の原作はSFならではのホラの巧みさが図抜けてるので、アレがきちんと映像になったら凄ぇはずという意味では期待度は常に高いんだけれど、でも、これまでの映画版やドラマ版、アニメ版を見てきている身としては、それが叶わぬ夢、実らぬ高望みだという知恵も身についちゃってて、結果、今度のドラマ版にもそれほどの期待はしていなかったのよ。
アナ:そのちょっと込み入った原作ファン心理、よくわかります。
歴代「日本沈没」
林:今回のドラマ版、ワタシは「ニッポンチンボツ」ではなく「ニチボツチンポン」と呼んでました、『日本沈没』とは別物だから「日没沈本」。
アナ:似て非なる、と。
林:ウチでは『日本沈没』とその派生商品には一応、ちゃんと系統立てた呼称があって、
▼原作小説が「日本沈没」
▼1973年の映画版(東宝)が「映画版」
▼1974年のドラマ版(TBS系)が「ドラマ版」
▼2006年の映画版(東宝・TBSほか制作)が「日沈本没(ニッチンポンボツ)」
▼同じ年の小説『日本沈没 第二部』が「続篇」
▼2020年のアニメ版が「アニメ版」
▼今年のドラマ版が「日没沈本(ニチボツチンポン)」
……という具合。
アナ:最初の映画版やドラマ版、原作の続篇などの呼び方にはまだ敬意が感じられますが、草彅剛さん主演の映画版と今回の小栗旬さん主演のドラマ版──まとめて呼ぶなら21世紀の実写版──への評価は低いということがよくわかります。
林:そのと~り! ヒッジョ~に、キビシ~ッ!
アナ:あれ、財津一郎さんまで出てきましたが、では今回の「日没沈本」、つまり日曜劇場版を年間ワースト第1位にまで挙げられた理由は何ですか?
林:全部話すと3日はかかるけど、いい?
アナ:いや、大胆にかいつまんでお願いします。
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