ラッパー・SKRYUが明かす、初めてのMCバトルでボコボコにされた日 相手ラッパーのアンサーで頭が真っ白に

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身体的な暴力以上の威力

 ――よかった、間に合った。

「次の1回戦はまだ枠が空いています……。誰か……」

 司会者が次の台詞を言い切る前に、勝手に身体が動いた。リュックサックを背負ったまま、観客をかき分けステージに上がっていた。「当日エントリーだね。MCネームは?」

 ちゃんと考えてきた。MC植田。本名だ。ちなみにMC植田名義の活動はこの日だけ。のちにSKRYUを名乗ることになる。相手は自分よりも大柄で、強そうなMCだったからジャンケンに勝って先攻を選んだ。

「レディーファイト!」始まってからは一瞬だった。「お前の心を 逆撫でる(aaaeu)」「俺は決めていく 鮮やかなデビュー(aaaaaeu)」1カ月考えてきた渾身のネタをドヤ顔で叫び散らしても、マイクの持ち方を知らなければ会場に声は通らないと初めて知った。

「声が小せぇ ぽっと出 馬の骨」的確で簡潔なカウンターパンチを食らってゲームセットである。身体的な暴力を真っ正面から食らうと頭が真っ白になる時があるが、言葉のパンチの威力はそれ以上だった。完敗だったけれど、当日エントリーでステージに上がった勇気を会場は拍手でたたえてくれた。試合後に「君が今日はじめての当日エントリーだった。あの試合の後から当日エントリーが増え出して、枠は全て埋まった。ありがとう」と、司会者に褒めてもらえたのは今でも忘れない。いつか馬鹿デカい会場でラップしてやると心に誓ってから4年。あっという間だ。

 SKRYUは前回の優勝者として、10月9日戦極MCBATTLE第24章に出場した。

 開催地は、日本武道館だった。

SKRYU(すくりゅー)
1996年島根県生れ。愛媛県松山市のフリースタイルラップ大会をきっかけにキャリアをスタート。現在は東京を活動拠点にMCバトルや楽曲制作にて目覚ましい活躍を続けている。

デイリー新潮編集部

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