アホの坂田を引き出した「前田五郎さん」 晩年は吉本興業とトラブルで裁判沙汰【2021年墓碑銘】
〈吉本と闘わなアカン〉
09年4月、吉本に所属する漫才師、中田カウスさんの自宅に、〈警告書 お前を必ず片輪にして、舞台に立てぬ様にしてやる〉などと不穏な言葉が書き連ねられた脅迫状が届く。
この事件で「週刊朝日」が、前田さんが捜査線上に浮上との記事を5月に掲載。前田さんの筆跡が脅迫状と似ており、両者は不仲だったと嫌疑をかけた。
同年9月、前田さんは「週刊新潮」に長文の手記を寄せた。一部はこんな具合だ。
〈“吉本への恩義”と“犯人扱いされる屈辱”の間で揺れ続けた辛い日々やった。最初は、すぐに誤解は解けるやろ、と思てた。〉
〈いつかは濡れ衣と判断して、仕事に復帰させてくれるはずやと思てた。しかし状況は悪くなるばかり。ついには吉本と闘わなアカンとこまで追い詰められたんや。〉
前田さんは「犯人扱いされ仕事を奪われた」として吉本に1億2千万円の損害賠償を求めて提訴。だが、一審の大阪地裁は、吉本が前田さんの意向を無視してタレント活動の休止を決めたと認める証拠はないなどと判断。敗れた前田さんは闘い続けるが、最高裁は13年に上告を退け、請求を棄却した一、二審の判決が確定する。
一方で前田さんは、犯人視の発端となった「週刊朝日」を発行する朝日新聞出版などを名誉毀損で提訴。一審で前田さんへの賠償が認められ、二審で和解。同誌は和解金を支払い、お詫び記事を掲載した。ひとまず名誉は回復されたが、真犯人は不明のままだ。
近年はトークライブで活躍。今年8月、初孫の誕生を喜び、先の仕事も入っていた中で体調を崩す。
10月17日、79歳で逝去。
吉本を離れた理由について、各紙訃報では「所属事務所とのトラブル」とあっさり触れられただけである。
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