元公安警察官は見た 被害に遭う日本人続出…上海のカラオケクラブは中国ハニートラップの巣窟

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残された5通の遺書

 2004年4月末、領事はロシア・サハリン州の在ユジノサハリンスク総領事館に異動が決まった。

「領事の異動を知った中国のエージェントは激高したそうです。『ここまでやってきて、逃げられると思うか。我々に協力しなければ、女との関係を領事館だけでなく、本国にも暴露してやる』と言って脅迫したのです」

 追い詰められた領事は5月6日、中国のエージェントと再び会う約束をしていたが、その日の午前4時、領事館の宿直室で首を吊った。当時の杉本信行総領事や妻、同僚などに宛てた5通の遺書を残した。

 杉本総領事に宛てた遺書には、こう綴られてあったという。

「あの中国人たちに国を売って苦しまされることを考えると、こういう形しかありませんでした」
「日本を売らない限り私は出国できそうにありません」

 外務省は遺族のことを考え、1年半以上もこの件を首相官邸に報告しなかった。2005年12月、週刊誌が報じてようやく問題になったのだ。

「この事件は、公安捜査員の間では有名な話です。中国がいかにしてハニートラップを仕掛けてくるのか、具体的事例として教訓とすべき事件です。上海のカラオケクラブは、いまだにハニートラップをやっていますよ。最近、上海にある日本企業に勤務している私の知人がカラオケクラブで女性と仲良くなっところ、企業の機密情報を教えてとせがまれたそうです。」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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