「朴槿恵に恩赦」で文在寅へ巻き起こった大ブーイング 次期大統領が「保守でもリベラルでも監獄行き」と言われる理由
韓国政治のダーティーな部分
12月24日、韓国政府が収賄や職権濫用罪などの容疑で服役中の朴槿恵(パク・クネ)前大統領を新年特別赦免(恩赦)の対象とし、同月31日に釈放することを発表した。表向きには、文在寅(ムン・ジェイン)大統領から朴前大統領へのクリスマスプレゼントかお年玉のようにも映る。が、実際には大統領選を約3カ月後に控え、権謀術数をめぐらす韓国政治のダーティーな部分が見え隠れする。現地在住・羽田真代氏のレポート。
今回恩赦の対象となった朴氏は韓国初の女性大統領であり、弾劾され失職した初めての大統領でもある。
彼女は2017年3月に職権濫用や強要の容疑で逮捕・起訴され、懲役22年が確定。服役期間は既に4年9か月となっていた。服役中は肩や腰の持病悪化に加え、精神状態も不安定となり入退院を繰り返す生活を送っている。現在はソウル市内にあるサムソン病院に入院中だ。
大統領府報道官が24日の会見で朴前大統領の恩赦について「健康状態が悪化した点も考慮した」と明かしているが、それは建前に過ぎず、文大統領が今後の政局を見据えて切ったカードに他ならない。
韓国民からの文大統領批判
政府は朴前大統領以外にも、リベラルの廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権で初の女性首相となった韓明淑(ハン・ミョンスク/不正政治資金を受け取った罪で懲役2年)氏に対し、10年の非選挙権停止を解除して復権させることを決定。さらに、親北朝鮮政党の元議員の李石基(イ・ソクキ/韓国政府の転覆をはかった内乱扇動罪で懲役9年)氏も仮釈放としている。
これは保守である朴前大統領の恩赦に対するリベラルからの異議申し立てに文大統領が配慮し、支持勢力の結集を意図した結果だと見ていいだろう。
一方、収賄や横領罪などで懲役17年の刑が確定し、服役している保守の李明博(イ・ミョンバク)元大統領は恩赦対象から外された。李政権下の検察の捜査によって盧元大統領が自殺に追い込まれた経緯があるため、彼にまで恩赦を出すとリベラル陣営からの強い反発を招きかねない。そうした事態を避ける思惑があったと見られている。加えて文大統領自身、盧政権下で大統領側近だったこともあり、私的な思いも込められていることだろう。
朴前大統領の恩赦報道を受け、韓国民からは文大統領への批判的なコメントが目立つ。
「文在寅の任期が終わるから釈放するんだ。セウォル号の事件を利用して扇動し、ネットコメントを捏造して国民を欺き、ろうそくクーデターで政権奪取。その後は対北朝鮮ショーを繰り広げ、不動産を暴騰させ、いつ爆発するか分からない負債爆弾を育て、若者たちの夢と希望を抹殺して国民生活を苦境に陥れる罪を犯し、退任後のことが不安になったから釈放するんだ」「文在寅は朴槿恵の10倍にあたる刑を受けなければならない!」等々。
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