【カムカム】安子を最後まで苦しめた額の傷跡…そしてるいが18歳になって気づいた事

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「ひなたの道」は何を指すか

 その理由を城田優(35)のナレーションはこう説明した。

「いくら千吉に説得されても拒み続けました。雉真家にしばりつけられたくない。それはるいの意地でした。けれど、この傷がかえって自分を雉間家に、そして母の安子に縛り付ける鎖になっているのだと岡山を出た今になって気がつきました」(城田のナレーション)

 ここで分かるのは、るいが自分には居場所がないと思っていたこと。第39話のナレーションでも、るいは岡山と雉真家に2度と戻らないつもりだと説明されている。居場所がないと考えていたのは図らずもロバートと寄り添う前の安子と同じである。

 もっとも、幸いにもるいの居場所は道頓堀に来てから、すぐに見つかった。竹村平助(村田雄浩、61)、和子(濱田マリ、52)夫婦が営む「竹村クリーニング店」で、住み込みで働き始め、2人から我が子同然の扱いを受ける。一安心だ。

 この物語の底流にあるテーマは、稔が愛したルイ・アームストロングの歌「オン・ザ・サニーサイド・オブ・ザ・ストリート」。さらに、このタイトルを直訳した「ひなたの道」が重要な意味を持つようだが、それが何を指すのかはまだ分からない。

 答えはありふれたことのようだが、「全力で生きていれば、きっと良いことがある」ではないか。この歌の「明るい表通りを歩けば 何もかも良くなるさ」という歌詞とも重なる。「全力で生きる」を「明るい表通りを歩く」に置き換えれば良い。

出演陣はほとんど交代

 安子は全力で生きた。頼れる身内がいない中、幼いるいにひもじい思いをさせまいと倒れるまで働いた。それが裏目となり、るいに傷を負わせてしまうと、今度はそれを治す資金も貯めようとした。ロバートが第38話で「もういい、あなたはもう十分苦しみました」と告げたのもうなずける。きっと良いことがあるはずだ。

 おそらく、るいも全力で生きる。安子と同じように困難にぶつかりながら――。

 出演陣はほとんど交代した。深津はドラマや舞台に関わる誰もが認める演技派だが、やっぱりうまい。48歳ながら、表情や仕草、話し方で18歳に見せようと努めている。

 安子編の助演者は演技巧者ばかりだったが、るい編もそう。村田も濱田も温かい人物を演じさせたら、天下一品だ。

 注目はこれから出てくる女子大生のベリー(市川実日子、43)。大きな役になる。やはりうまい人なのは誰もが知るところだろう。

 市川も43歳にして女子大生役。大女優の故・森光子さんは80代後半まで舞台「放浪記」で20代の女給を演じたが、うまい女優たちは観る側を騙す。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

2021年12月26日掲載

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