【カムカム】安子を最後まで苦しめた額の傷跡…そしてるいが18歳になって気づいた事
NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」(月~土曜午前8時)のヒロインが交代した。12月22日放送の第38話の前半までは安子(上白石萌音、23)の物語だったが、同話の終盤からはるい(深津絵里、48)が中心人物に。新章を迎えたこの朝ドラをあらためて考察したい。
【写真】演技力で視聴者を引き込んだ上白石萌音と18歳を演じることが話題になった深津絵里
主題歌が流れたのは開始から12分
安子編のラストとなった第38話はいつもと構成が違った。主題歌「アルデバラン」(歌・AI)が序盤でかけられず、放送開始から13分も過ぎてから流された。
その時、安子はロバート・ローズウッド(村雨辰剛、33)の胸の中で号泣していた。最愛の娘・るいから絶縁を宣言されたからだ。
向田邦子賞作家・藤本有紀さん(53)による凝った脚本に舌を巻いた。この構成はやはり特別な展開だった第8話と相似形なのだ。同話も主題歌が流れたのは開始から12分の時点。その時、安子は大阪から岡山に帰る列車内で同じく号泣していた。
この時の安子は父・金太(甲本雅裕、56)の勧める結婚を受け入れようと考え、大阪商科大予科の学生だった雉真稔(松村北斗、26)との別離を決心していた。やはり最愛の人だった。
もっとも、稔が安子を追い掛け、金太に安子との結婚を申し出たことから、2人の運命は急変する。
一方、第38話のるいは安子を追わなかった。安子は倒れ込むほどショックを受け、ロバートに「私をアメリカに連れて行って」と涙ながらに懇願する。もともとロバートから求愛されていた。るいから拒絶されてしまった日本には居たくなかったのだろう。
安子とロバートの縁をつないだのは……
父・金太は病死。母・小しず(西田尚美、51)と祖母・ひさ(鷲尾真知子、72)は戦死した。頼りにしていた兄の算太(濱田岳、33)は2人で貯めた独立資金を持ち逃げしてしまった。拠り所とする人はもうロバートしかいなかったのだ。
自分をずっと好いていた義弟で幼なじみの勇(村上虹郎、24)と再婚するという生き方もあったのだろうが、それは義父の千吉(段田安則、64)の描いた絵図の通りで、政略結婚のようなものである。第一、安子の側に愛情はなかった。
終戦直後までは夫が亡くなると義弟と再婚する女性が珍しくなかったが、その勧めを拒否する女性も多かった。義理とはいえ、家族だった人と夫婦になるのは簡単ではない。
「藤本さんの脚本は奥が深い」とドラマ制作者の間ではよく言われている。ここまでの物語もそうで、よく考えてみると、あることに気付く。安子とロバートの縁をつないだのはほかならぬ稔なのだ。
安子は第3話で稔から「明日の朝、6時30分にラジオをつけてみて」と言われ、ラジオ英語講座と出会った。稔の言葉がなかったら、高等小学校を出て家業の和菓子店「たちばな」を手伝っていた安子と英語の接点はない。
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