戦力補強は2種類ある…巨人はなぜ西川遥輝を諦めたのか【柴田勲のセブンアイズ】
「なぜ左打者?」
巨人が獲得調査を進めていた前日本ハム・西川遥輝外野手(29)が楽天入りすることになった。巨人はどうやら水面下で交渉を重ねていたようだが、条件面などが折り合わず撤退したようだ。
私はこれで良かったと思う。
西川は海外FA権を持ちながら、自由契約になっていた。そのいきさつについてはいろいろあるのだろうが、実績のある選手だ。長い間1番打者として活躍、今季は130試合に出場して打率.233、3本塁打、35打点に終わったものの24盗塁で盗塁王を獲得している。出塁率も.362だった(※)。
だが、西川を調査との報道に接した時、「なぜ左打者を獲るのかな?」と少し首をひねった。巨人の外野陣は亀井善行が引退したが、丸佳浩、今季急成長した松原聖弥、それに梶谷隆幸が左打者だ。その梶谷は今季ケガに泣かされ続けたが、現在はリハビリに励んでいる。重信慎之介もいるし、若林晃弘は内、外野を守ることができるスイッチヒッターだ。左が結構いる。しかも右だがレギュラークラスのゼラス・ウィーラーがいる。
まあ、獲得するのなら右打者だろうし、実際、巨人は新外国人として右のアダム・ウォーカー外野手を獲得している。メジャー経験はないが独立リーグで2年連続MVPを獲得している。西川の入団は彼らの出場機会を減らすことになる。資金を投入しているのだからどうしても使う。
補強には「絶対必要」と「保険」の2種類ある。西川のケースは保険だったと思う。今季推定年俸は2億4000万円で大幅減は確実だった。巨人もかなり低い提示額だったと推察する。それに納得がいかなかったのか。そのへんは不明だ。
松原は発展途上だが期待
だが、巨人は原監督のためには全面的バックアップを惜しまない。原監督が、「なんとしてでもお願いします」と言えばなんとかしたと思う。
20年のシーズン途中で加入したウィーラーは保険で活躍した。今季の推定年俸は5000万円と見られる。昨年、FAで入団した井納翔一も菅野智之のメジャー行きを想定しての保険だった。年俸は2年総額で2億円(推定)という。菅野のメジャーはなかった。今季は5試合に登板して0勝1敗、防御率14.40、戦力とはほど遠かった。
保険には成功があれば失敗もある。今回は西川の実力を総合的に判断し、無理をしてリスクを冒さなかったということだろう。来年は30歳で衰えとは無縁ではない。巨人は外国人の助っ人補強に舵を切ったのかも。
もちろん西川の希望もあったに違いない。楽天での定位置争いも厳しいが、慣れ親しんだパ・リーグに今後の活路を見出そうと決意したことも考えられる。もちろん、条件面がよかったのかもしれない。
確かに巨人は今季1番打者を固定できなかった。でも松原がいる。今季135試合に出場し、77試合で1番を任された。まだまだ発展途上だが期待できる。育成出身として巨人で初めて規定打席に達した。また育成出身でシーズン最多本塁打(12本)を記録、巨人生え抜きでは最多の27試合連続安打を達成した。
本塁打数とか派手な記録につい目が行ってしまう。あの身体(173センチ、74キロ)で大振りする。それが打撃の特徴なのだがやはり粗く映る。今季の出塁率は.333だった。これをもっと高めてほしい。
ボール球を振らない。選球眼を磨いて四球を選ぶ。しぶとい打撃で相手投手が嫌がるような打者になればしめたものだ。足もある。盗塁数15は巨人トップだった。守備だっていい。これは吉川尚輝にも言えることで、彼の課題は内角球をいかにさばくかだ。足や守備のレベルは高い。もっとしぶとくなれだ。
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