「電動キックボード」が“自転車並みに”規制緩和へ 甘利明前幹事長の後押しで急展開

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警察庁内でも根強い反対意見

 このような現状ならば、むしろ規制を強化すべきとなるはずだろう。だが、国は逆の方針を明らかにした。12月23日、警察庁が来年の通常国会に、電動キックボードを16歳以上であれば運転免許を不要とする道路交通法改正案を提出する方針を固めたと報道された。

「ヘルメットの着用は任意で、時速6キロまでに制御していれば歩道を走ることも可能に。これまでの原付バイクの同じ扱いが一転、自転車並みに気軽に乗れるようになります」(同前)

 法案を提出する警察庁内でも、この規制緩和を疑問視する声が多いという。

「まずます事故が多発し、重大な人身事故が起きるのは目に見えています。少なくとも現場レベルでは誰もが反対しています。政府がやると決めた方向に従わざるを得なくなり、いやいや進めざるを得なくなったのでは」(警察庁関係者)

 普及を目指す業界団体の要望を受け、規制緩和の音頭を取ってきたのは経産省だ。産業競争力強化法に基づく新事業特例制度に基づき、昨年から電動キックボードで公道を走行できる特例措置を特定エリアに設け、実証実験を行ってきた。

「大義名分としてあるのが脱炭素です。世界でも電動キックボードの普及は進んでおり、車の走行を減らし、CO2排出を減らす効果があると言われています。一方、新規参入を目指す業者にとっては、大きなビジネスチャンスとなります。世界では5兆円規模、日本国内だけでも1兆円規模の巨大市場ができると言われています」(前出・社会部記者)

いまだ保つ経産省への絶大な影響力

 そんな業界からの熱い要望を受け、経産省とともに普及に向けて活動してきたのが、自民党の「モビリティと交通の新時代を創る議員の会(通称・MaaS議連)」である。経産省の政務三役経験者らが4、5人を連ねているのが、もっとも際立つのが会長の甘利明・前自民党幹事長だろう。10月の総選挙では小選挙区で敗北し、幹事長辞任に追い込まれた。その後、すっかり名前が聞かれなくなったが、いまだ大物族議員として経産省には絶大な影響力を持っていると言われている。

「今回の規制緩和は、甘利さんが3Aの一角として、政界に力を持ってきた頃に強く推し進めてきた。いまや岸田首相に切り捨てられ、見る影もなくなってしまいましたが、そのまま押し切ったのでしょう」(同前)

 世界で普及が進んでいると言われる電動キックボードだが、日本は欧米に比べて道路が狭く、自転車専用道路の整備も進んでいない。国会では慎重に議論してほしいところだ。

デイリー新潮編集部

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