元公安警察官は見た 南アジアの某駐日大使館のパーティーで毎年“暴動”が起きるワケ

  • ブックマーク

「オー、ウェルカム」

 翌年、大使館の入り口に職員と警察官を配備して、前年のレセプションで騒ぎを起こした人物を中に入れないようにしたという。

「大使館の入口には、問題の人物の顔を知っている職員を配置しました。ところが、大使はすべての職員に、問題人物を排除せよという方針を伝えていなかったのです。レセプションが始まり、騒ぎを起こした人物が現れると、『オー、ウェルカム』と言う職員がいたのです」

 むろん、大使から問題人物を入れるなと指示を受けた職員は『君は入れない』と言って制止したという。

「それを受けて、警察もその人物を中に入れないようにしました。入場を拒否された人物は『毎年レセプションに来ているのに、なんで入れないんだ。あの職員はウェルカムと言ってくれたぞ』と言って、また騒動になりました。中に入れろ、入れないの小競り合いになり、入場を拒否した警察官の胸倉がつかまれる事態となったのです」

 この騒動に、さすがの勝丸氏も呆れかえった。

「大使に『なぜすべての職員に問題人物排除の方針を伝えなかったのか』と抗議しました。激しやすい人たちを抑えるのは非常に難しいですね。この国では、選挙のたびに野党支持者が投獄されるなど、日本では信じられない事が起きます。与党と野党の対立の根は深いですよ」

 2018年にあった総選挙でも各地で暴動が起こり、少なくとも18人が死亡、200人が負傷した。現在も与野党の対立は続いていて、レセプションも相変わらず暴力沙汰が起きているそうだ。

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。