“アングラの女王”李麗仙さん 知人が語る、唐十郎さんとの最期の場面【2021年墓碑銘】
「強い絆に震えた」
一方、唐さんは離婚翌年に再婚。もうけた1男1女はともに役者として活躍中だ。
李さんは唐さんが書いた作品と別れることはなかった。離婚後の初舞台「ベンガルの虎」は唐さんの代表作のひとつである。演技力は定評があり、舞台、映画、テレビから出演を請われ続けたが、2018年に脳梗塞になる。そして今春、肺炎を患い、6月22日、79歳で逝去。
唐さんはといえば12年に転倒し、重度の脳挫傷を負う。最近では舞台で短い挨拶こそ発しているが、残念ながらかつての雄弁で活発な姿はない。
李さんが他界した翌日、唐さんは大鶴義丹さんに付き添われ亡骸と最期の対面を果たした。
「李さんは病に倒れる前、よく私に、“唐の好きな寿司を三人で食べようよ。唐を連れてきて”と言っていました」
と語るのは、唐さん、李さんと50年来の親交がある角川清子さんである。
「唐さんは、李さんの御遺体と対面すると合掌し、すぐ横にあった椅子に腰をかけて、自由の利かない手を叩き始めたんです。これは、“幕が下りた。おつかれさん”と、演出家が看板女優をねぎらう拍手だと気づきました。それから李さんの顔を触ったりしながら、何事か話しかけたようでした。突然、劇中歌を歌い出す場面もありました。唐さんは帰り際にくるっと李さんの御遺体の方を振り返り、“さようなら”と言うかと思ったら力強くこう言ったのです。“李麗仙、また逢おう!”と。二人三脚の強い絆に震えました」
最期まで盟友だったのだ。