新庄監督、錦鯉・長谷川…“愛されるおじさん”の共通点は? 憎めないキャラを構成するものとは

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遅咲きの錦鯉・長谷川も……各所で花開くおじさんたちの共通点

 新庄監督と同学年でブレーク中の人といえば、錦鯉の長谷川雅紀さんがいる。奇しくも日ハムの本拠地・北海道出身だ。40代後半で日の目を見た苦労人だが、彼の魅力も「憎めなさ」なしでは語れない。第7世代ら若手に交じって「こーんにーちはー!」と大声を張り、オーバーな顔芸でボケて全力でスベる。8本歯が抜けているため滑舌も悪い。けれどもそのひたむきさやへこたれなさは、胸にグッとくるものがある。「M-1グランプリ」では昨年に引き続き決勝進出。打ち上げ花火的な注目ではなく、しっかりと爪痕を残す底力を感じさせた。

 本業にかける泥臭い情熱と、お茶の間に向けるカラッとしたサービス精神。陰と陽の顔を使い分け、ビッグボスも長谷川さんも「なんだか憎めないおじさん」というポジションを不動のものにした。彼らより少し歳が上だが、今や引っ張りだこのずん・飯尾和樹さんも同じタイプだろう。終始穏やかな笑顔で無茶ぶりを受け続ける、ガッツある遅咲きの人だ。お笑いの実力だけでなく、人柄の良さにも定評があるというのもうなずける。

「比べない」から「憎めない」 実力社会でものを言う人柄の強さ

 ビッグボスと長谷川さんが持つ、憎めないという魅力。その源泉は、「比べない」という精神ではないだろうか。ビッグボスは現役時代、「野球以外の面で人の悪口は言わない」ことを決めていたそうだ。バリ島滞在時代に知人に裏切られ、6畳ワンルームの暮らしになった時も、あっけらかんとした顔でトレーニングに励んでいた。マスコミ受けがいいのも、メディアや相手によって態度を使い分けたりしないからだろう。

 また長谷川さんの同期にはタカアンドトシがいるが、彼らが先に有名になっても嫉妬や焦りはなかったという。無欲ゆえにブレークに時間がかかった一方で、のほほんとした持ち味が業界内外を惹きつけたのも事実だ。大好きなパチンコのネタを選んで賛否両論を呼んだ昨年のM-1決勝では、「なんであのネタ選んだ」とバイきんぐ・小峠英二さんが本人たち以上に悔しがったというエピソードもある。

 野球もお笑いも実力主義、弱肉強食の世界といわれる。少し前まではどちらの世界でも、パワハラ的な風潮が残っていた。人の良さなど二の次という空気があった。しかしビッグボスや長谷川さんの人気を見て思う、「人柄も実力のうち」の時代かも、と。

 人と比べないから振り回されない。人と比べないから揺るがない。裏表のない姿勢から生まれる憎めないキャラクターは、ちょっとまぶしいくらいだ。「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」と言ったのは探偵フィリップ・マーロウだが、「人間性は大事。悪口を言わない、お礼が言える。そういう選手を育てていきたい」とビッグボスは語った。野球界で、あるいはM-1決勝で、名探偵でも予測のつかないようなドラマを彼らが起こしてくれるに違いない。

冨士海ネコ

デイリー新潮編集部

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