なぜ今「アングラ演劇」人気が再燃しているのか 寺山修司、唐十郎作品が相次いで上演
唐は「稽古を見て泣いてらした」
4月に「天井桟敷」の中心メンバーだった若松武史が他界、6月には唐の元妻で“アングラの女王”と呼ばれた李麗仙が亡くなった。斯界には暗いニュースが続いたが、10月に唐が文化功労者に選ばれたほか、80年代に寺山作品の舞台美術を手掛けた現代美術家の日比野克彦(63)が、東京藝術大学の次期学長に内定。関係者は喜びに沸いた。
アングラ演劇にも大きな節目が訪れているが、2年前に唐作品にデビューし、今回の「泥人魚」にも出演する風間杜夫(72)は言う。
「僕が無名の演劇青年だった頃、状況劇場を見て衝撃を受けた。奇優・怪優が縦横無尽に走り回る公演は、異次元の世界に連れ去られるような心持ちがしたもの。あれから約50年を経て、稽古から本番まで毎日のワクワクが止まりません」
唐作品については、
「演劇の原点。肉体と精神の融合が抒情的な一編の詩を紡ぎだし、役者を高みに押し上げる。時間と空間を超えた異次元の世界に尊い生命への賛歌を感じて、役者として震えますよ」
つい先日、唐が稽古場に姿を見せたという。
「稽古を見て泣いていらした。その姿の何と愛しいことか。この天才の世界を表現することに、無上の喜びと誇りを感じます」
高度成長期に花開いた演劇文化の一輪は、令和の世にも継承されている。