フジテレビ 春から水曜22時で日テレとドラマ対決 Aクラス入りを目指す社長への期待

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「クリエイター社長」の目標

 ここで2022年3月期上期(2021年3月29日~同年10月3日)の視聴率を確認しておきたい。視聴率は今も昔も民放の生命線。収益と直結する。

 全日帯は午前6時~午前0時、ゴールデン帯は午後7時~同10時、プライム帯は午後7時~同11時である。

■日本テレビ
全日帯    世帯7.3%、個人全体4.0%
ゴールデン帯 世帯10.1%、個人全体6.1%
プライム帯  世帯9.8%、個人全体8.9%

■テレビ朝日
全日帯    世帯7.3%、個人全体3.8%
ゴールデン帯 世帯10.2%、個人全体5.7%
プライム帯  世帯10.4%、個人全体5.8%

■TBS
全日帯    世帯5.7%、個人全体3.0%
ゴールデン帯 世帯7.7%、個人全体4.6%
プライム帯  世帯7.7%、個人全体4.5%

■フジ
全日帯    世帯5.4%、個人全体2.9%
ゴールデン帯 世帯7.4%、個人全体4.6%
プライム帯  世帯7.4%、個人全体4.4%

■テレビ東京
全日帯    世帯2.7%、個人全体1.4%
ゴールデン帯 世帯6.4%、個人全体3.6%
プライム帯  世帯5.6%、個人全体 3.2%

 端的に言い表すと、日テレとテレ朝がAクラスを争い、フジとTBSはBクラスで競っている。

 今年6月に就任した金光社長は一気にAクラス入りを目指しているとフジ社内では言われている。会社全体がそれを期待している。

 金光社長は民放の社長の中で唯一のクリエイター出身者であり、番組の良し悪しが分かるからだ。編成マン時代、教養バラエティー「カノッサの屈辱」(1990年)や世界中にフォーマット(番組仕様)が売れた「料理の鉄人」(1993年)などのヒット番組を次々と企画した。あるフジOBは「金光さんがトップでも立ち直れなかったら、もう何をやったってダメ」とまで言っている。

 来年3月末にはタレントの坂上忍(54)がMCを務める大型帯番組「バイキングMORE」(平日午前11時55分~午後2時45分)が終わる。昼と午後の番組が大きく変わる。ほかにも編成や番組の大幅な見直しが予定されている。フジ復権を目指し金光社長が大ナタを振るう。

 一方でフジが年明けから希望退職を募るのは知られている通り。これも主導者は金光社長だ。対象は勤続10年以上で50歳以上の社員。この条件の該当者は約300人もいる。

 ただし最大の狙いは人件費削減や大幅な人員減ではなく、危機感の足りない組織に「喝」を入れること。いまだ民放トップ時代の意識が抜けず、危機感のない社員がいるからだ。

 フジには今も潤沢な資産がある。しかもコロナ禍に苦しみ抜いた前年度よりCM収入が急伸している。財務面だけ考えたら、退職者を募る必要はないのである。

 今回、フジが目標としている退職者数は「20人」(同・フジ社員)。条件に合う社員は約300人もいるのだから、少ない。やはり最大の目的は組織の引き締めなのだ。

「2017年にも希望退職を募ったが、その時は型通りの募集しか行わず、辞めたのも7人だけだった」(同・フジ社員)

 今回は組織引き締めという大目標があるから、局長が陣頭指揮を執って希望者を募る。

 2011年に視聴率3冠王の座から転落してから10年。やっとフジは変わるのか。それとも2度と復活の日は来ないのか。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮編集部

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