文大統領「北京五輪支持」で吸った甘い蜜の味 「ボイコットする考えもなく、能力もなく、勇気もない」と揶揄されるスタンス
「北京五輪開催支持」の見返りとは
その見返りとは、「限韓令(中国国内で韓流コンテンツの流通を制限すること)」の解除だ。
12月3日から6年ぶりに中国全域で韓国映画の上映が解禁され、中国版ツイッター“微博(ウェイボ)”で韓国芸能人のアカウントが復活しつつある。
2016年、韓国がアメリカの最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備に合意したことに反発し、中国は「限韓令」を発令した。中国当局はこれを報復措置だと認めていないが、THAAD配備への反発行為と見て間違いない。
この限韓令のために、中国への娯楽作品などの輸出が規制され、韓国の芸能人が中国内で活動することもできなくなっていたのだ。
一方で、ハリウッド映画の「スパイダーマン」シリーズ最新作は今月中旬に中国でも公開が予定されていたが、公開取り消しとなり今後の公開も未定となっている。北京オリンピックの政治的ボイコットを表明したアメリカに対し、中国は制裁措置を取り始めたように映る。
失われるものは大きい
韓国・文化ニュースが配信した2017年の報道に「韓国文化産業輸出の30%以上を中国市場が占めており、2015年は輸出額が2兆3000億ウォン(約246億円)水準と推定」とある。国家戦略として4500億ウォン(約410億円)もの予算を投資し、韓国エンタメを輸出する韓国にとって、“限韓令解除”は何としてでも手にしたいものだったはずだ。
文大統領が北京オリンピックの外交的ボイコットに参加しない意向を示したことで、韓国内からは「韓国が中国をボイコットできるだけの力があるのか? もっと国力をつけないと」「日本のように公平な態度を取れ」「文在寅はボイコットする考えもなく、能力もなく、勇気もない」「もう二度と(与党の)民主党を選挙で選ばない」と、現政権を皮肉る声が多く挙げられている。
韓国の瀕死の経済状況を考えると、限韓令解除による利益を得る方が一時的には得策なのかもしれない。文政権が切望する南北関係の進展という観点では、北朝鮮と良好な関係にある中国に擦り寄っておく方が、終戦宣言表明に乗り気ではないアメリカの肩を持つよりもベターなのかもしれない。
しかし、「ボイコットに与しない」ことで失われるものは大きい。その最たるものは、「新疆ウイグル自治区をめぐる人権問題」に関して中国当局を支持したと受け止められかねないということだ。
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