文政権下の不況に勝てず ソウル駅内の名物レストランが96年の歴史に幕

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親日派、米帝の手先で

 開業後の50年間は40名の料理人を抱えて一度に200人が食事できる規模だった。しかし、経営を担う鉄道庁の放漫さと、競合となる飲食店が次々にオープンした煽りを受けて営業赤字が膨らみ、プラザホテルに経営権が移ったことがあった。これ以降オーナーが幾度か変わり、場所の移転などを経つつ、存続の危機に瀕しては何とか切り抜けてきたわけだが、今回のコロナ禍と「文不況」だけは乗り越えられなかったようだ。

「グリル」の閉店を受け、韓国内では「私の思い出も消えてしまう」「100年という偉業を成し遂げる前に店を閉めるなんてもったいない」「初めてステーキを食べた場所なのに……」「80年代に分厚い鉄板でジュウジュウと焼かれたハンバーグステーキの味は今でも覚えている」と惜しむ声がインターネット上に寄せられている。やはり、96年という歴史は多くの人の人生に影響しているようだ。

 しかし、なかには「ここの店主たちは日本植民地時代には親日派、倭人の手先だったし……。米軍政時代、李承晩(イ・スンマン)時代は米帝の手先で……軍事政権下には独裁者側だったし……。こんな店はなくしてしまった方がいい」「老店というだけで存在価値がない。ちょっと有名だと思ったら高かったり、量が少なかったり……顧客に見放された店は淘汰される」という意見もあった。

「日帝残滓」の清算

 文政権は誕生してから今まで熱心に反日運動を繰り広げ、日本製品不買運動を行うなど懸命に韓国内から“日本”を排除しようとしてきた。その政権下で、96年にわたってソウル駅に居座り続けてきた「日帝残滓」を清算することができたのだから、文大統領の政策を支持する人たちはすがすがしい気持ちでいっぱいかもしれない。

 韓国の飲食店は開業後1年で40%が閉店し、5年後もサバイブしているのは僅か20%だ。2018年時点での新聞記事に「日本には100年以上続く老舗が2万2000店以上あるが、韓国には90店舗しかない」とある。「グリル」があったソウル駅の4階は高級レストラン街にリニューアル予定だという。「開業後1年で40%が~」の中に入らなければいいと願うばかりだ。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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