アル中の妻は浮気、娘は万引きで補導… 家庭が崩壊した不倫夫の告白「僕の何がいけなかったのか、誰か教えて」
同期の有紀子さんとの関係が始まり…
極度の貧血によって、社内で突然倒れたのだという。救急車で病院に付き添ってくれたのは、日頃から軽口をたたき合う仲のいい同期の有紀子さんだった。当時、ふたりとも37歳。有紀子さんは独身だった。
「それまで上司には妻のことを少し話していたんですが、他の人にはいっさい言っていなかった。だけどそれを機に有紀子には全部打ち明けました。打ち明けながら、僕は自分でも意外なほど泣けてしかたがなかった。自分がつらかったことを初めて自分で認めたんでしょうね。母親にさえ愚痴一つこぼしたことはなかったんです」
自分の気持ちをさらけだせた有紀子さんとの間に特別な感情が芽生えても不思議はない。しかも、結婚してから学さんは一度も絵理奈さんと性的な関係をもっていなかったのだ。絵理奈さんは夫との関係を拒んだ。学さんも無理強いはしなかった。
「絵理奈との関係は結婚したときが最高潮で、あとは下がる一方だったのかもしれない。でもそれも自分が思っているだけで、彼女は最初から僕を愛して結婚したわけじゃなかったんでしょう。妊娠したからどうしても誰かと結婚する必要性を感じていたんだと思う」
学さんは、そう嘆くように言葉を発した。そんな虚無感の中、娘のために必死で働き、必死で家庭を支えた彼が、ホッと一息ついたところで有紀子さんに「女」を感じてしまったのはやむを得ないかもしれない。
「有紀子は優しかった。この上なく優しく、僕を包み込むように愛してくれました。心も体も。僕は一気に有紀子にのめり込んだ。だけど社内不倫はまずい。お互いにバレたら大変なことになる。すると有紀子は突然、引っ越したんです。会社の人たちが誰も住んでなさそうな町で、僕が帰り道に寄りやすい場所。ありがたかったです。両親が娘を旅行に連れて行ってくれたことがあって、そのときはほとんど有紀子のところにいました。連休だったので3日間一緒にいましたが、以前から暮らしているかのようにまったく違和感を覚えなかった。もっと早く有紀子の素晴らしさに気づいていればよかったと、つくづく後悔しました」
入院から4ヶ月、絵理奈さんはたびたび外泊できるまでに落ち着き、その2ヶ月後には退院した。仕事に復帰したがった絵理奈さんだが、学さんはフルタイムで働くのは負担が大きいから時短にするかパートにするか、無理のない範囲でと釘を刺した。
絵理奈さんは素直に時短の道を選んだ。最初は母親に怯えているような顔をしていた娘だが、そのうち慣れていき、母に甘えるようになった。学さんは絵理奈さんの様子を伺いながら、有紀子さんとの関係を続けた。別れる気はまったくなかったという。
「自分ならうまくやりおおせると思っていたし、絵理奈には母親としての役割しか期待していませんでした。だから彼女が僕を求めてきたとき、正直言ってびっくりした。そして申し訳ないことに僕は役に立たなかった。絵理奈はショックだったみたいです。『あなたにとって私は女じゃないのね』と泣き出して。『今まで拒否していたのは絵理奈だから。驚いたんだよ』と言ったけど、有紀子に悪いという気持ちだった」
今度は学さんの心のバランスがとれなくなっていった。有紀子さんだけが心の支えだった。
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