オミクロン株「弱毒化」説を検証 終息への“救世主”となる可能性も
インフルエンザに近いものに
ところで、大山鳴動している割には南アでも欧米でも、12月6日現在、オミクロン株の感染者に、死者も重症者もいないという。
アメリカの金融持ち株会社JPモルガン・チェースは、オミクロン株は感染力が高くても致死性は低そうで、「重症度が低く感染力の強い株が重症度の高い株を急速に駆逐するという、過去のパターンに適合し、新型コロナを季節性インフルエンザに近いものに変容させる可能性がある」との見解を示した。100年前に猛威をふるったスペイン風邪も、こうして終息したようだが、すると、
Q.ウイルスが弱毒化した可能性もあるのか?
「現状、重症者や死者が出ていないからといって、重症化率が下がったとはいえません。ただ、もし重症化率がすごく高まっているなら、これだけ感染者が出ている以上、報告があってもいいはず。そうしたことを考えると、弱毒化している可能性も高いと思うし、そうであればいいとは思います。今後も重症者や死者が増えなければ、風邪に近いウイルスになったといえなくもないでしょう」
これは松井准教授の見解である。矢野医師も、
「感染者の年齢が若く、高齢者や基礎疾患がある人に広がっていません。それにワクチン接種者も感染しているから、わからないところがありますが」
と断ったうえで、言う。
「もしかしたらオミクロン株は“救世主”になってくれるのではないか、という期待をもっています。感染力は高くて致死性は低いのが、生き残れる賢いウイルス。日本には風邪として生き残っているコロナウイルスが4種類ありますが、感染しても鼻水など軽い症状のみ。それらも大昔は死に至る病だったのが、ある程度無害化して定着したと考えられます。オミクロン株もそうなったらいいと思う。デルタ株などを駆逐して、人間が重症化しなくなれば、うれしいことです」
「入院がいらない」との証言も
では、先に引用したJPモルガンの見解にも、妥当性があるということか。
「妥当性はあります。もしオミクロン株が重症化させないウイルスであったならば、このコロナパンデミックを、インフルエンザに近いものに変容させる可能性があります」
たしかに、「デルタ株では肺の奥からせきが出るため、多くの酸素が必要だったが、オミクロン株の感染者のせきは、のどにとどまるので、入院が要らない」との、南アの医師の証言もある。これを受け、矢野医師は、
「新型コロナ感染者の重症化には、感染者の免疫細胞がウイルスと戦うために作るサイトカインが、制御不能となって放出され続けるサイトカイン・ストームが関わっていますが、オミクロン株は変異によって、そのような性格をなくしたのかもしれません」
と話す。もっとも、矢野医師も「そうなればうれしい」と加えるし、オミクロン株が予断を許さないのは言うまでもない。だが、最悪の事態を念頭に置く必要がある一方で、恐れすぎて混乱を招かないためにも、終息を見通す目もまた、必要ではないだろうか。
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