オミクロン株「弱毒化」説を検証 終息への“救世主”となる可能性も

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感染力と再感染のしやすさは別問題

 Q.南アでは、すでに新型コロナに感染した人の再感染リスクが、従来の3倍だという。感染力の強さの証左ではないのか?

 寺嶋教授は、

「南アの複数の研究機関の発表では、11月以降の感染者の内訳を調べると、すでに感染したことがある人が多く含まれ、デルタ株などにくらべ、再感染リスクが2~3倍ということです」

 と言ったうえで、「しかし」と続ける。

「これは感染力の強さに直結するデータではありません。感染力の強さは、ウイルスが細胞の受容体にどれだけくっつきやすく、くっついた後、どれだけ細胞内に入りやすいかに関係します。一方、再感染のしやすさは、ウイルスが抗体をすり抜けるということで、スパイクたんぱく質が変異し、抗体にくっつきにくくなったかどうか。別問題です」

 浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師が、補って説明する。

「新型コロナウイルスに感染すると、体内に抗体ができ、免疫がつきます。しかし、1回感染した程度では抗体が薄く、弱い可能性がある。実は、感染することで備わった免疫と、ワクチンを接種して得られた免疫とをくらべれば、後者のほうが断然強い。感染して得られる免疫には、それほど期待できません。南アではワクチン接種率が低いので、再感染者が多いのは当然ともいえます」

 ワクチン接種率が高い日本とは、条件が違いすぎるといえるだろう。

子どもの感染は大丈夫か

 Q.南アでは子どもへの感染が拡大している。受験シーズンを控え、日本の子どもたちは大丈夫か?

 寺嶋教授の話を聞こう。

「現在、南アでは感染者は20~40代が、入院するのは0~2歳が多いといいます。小児の感染が多い理由としては、10歳未満の人口が多いことと、親世代のワクチン接種率が低く、両親などから家庭内感染していることが考えられます。デルタ株になって、10歳未満の感染者が増えたように、感染力が高い変異株では、いままで感染者数が少なかった世代に、症状のある感染者が増えました。その延長で、オミクロン株は感染力がさらに高まっているなら、子どもの感染者が増える可能性もあるでしょう」

 とはいえ、「必ずしも日本に当てはまらない」と、寺嶋教授。事実、親世代のワクチン接種率からも、家庭内感染の危険性は低いのではないだろうか。

「南アで入院が一番多いのは0~1歳。発熱やせきで、5歳以上の子どもより、脱水や呼吸器症状を来しやすいのだと思われ、これをもって、重症度が上がったとはいえません。親や保護者がワクチンを接種し、お子さんも打てる年齢なら前向きに考える。それから不織布マスクを密着させて着用し、換気や密の回避を心がける。そうした基本的なことが大事で、過剰に恐れる必要はないと思います」

 また、矢野医師も、「11歳以下の子どもに、ワクチンを打てるようにしてあげたい」と言ったうえで、すでに打てるのであれば、

「将来の副反応を心配する親御さんの気持ちもわかりますが、まずは感染させないことが重要。接種をお勧めします」

 と強調する。また、後述するが、少なくとも若い感染者に重症者がいないという情報も、参考になるのではないだろうか。

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