WEB、テレビ、週刊誌…各種メディアの特色と世代別の恋愛を表現 「和田家の男たち」に唸る
新聞・出版・テレビにWeb。各媒体から仕事をもらっているが、各々に特性はある。最も表現の自由度が高くて、時間に余裕のある雑誌畑で長いこと育ってきたので、他の媒体の言語統制や速度感覚、動体視力や目線の高さに驚くことがある。媒体というか、会社というか、人によるのだが。
3世代が異なるメディアに属する一家を描く「和田家の男たち」の話だ。割と身近な世界だけに「んなわけあるかーい!」とツッコむ気満々だったが、いろいろな意味でしみじみと、いや、まじまじと見入っちゃって。
主人公は勤務先の会社が倒産、後輩に誘われてWebライターになった和田優(相葉雅紀)。1本3500円の原稿料、交通費などの取材経費は一切出ない世知辛い業界。ただし、PVが伸びれば、相応のインセンティブが得られる。優はバズる&引き抜き&炎上を経験、ネット特有の毀誉褒貶の洗礼を受けたりもする。
彼の父はテレビ局勤務、報道番組のプロデューサーである和田秀平(祝結婚・佐々木蔵之介)。安易に数字を獲りに行くゴシップは断固拒み、視聴者に判断を委ねる報道を美学とする男だ。
さらにその父は、新聞社の元社長で論説委員の和田寛(段田安則)。最も言いたい放題でやりたい放題。初回登場で「すわ老害!」と思いきや、失恋して泣いたり、よりを戻して浮かれたりで可愛げがある。可愛げのある段田は久しぶりだわ。
このドラマ、たぶん観る人によって面白いと感じる要素が異なると思われる。
まず、毎回うまそげな料理で彩られた食卓を3世代で囲む「ホームドラマ」要素。相葉が作る丁寧な料理に着目する人もいるだろう。
そして3人の恋模様をやや濃いめに描く「ラブコメ」要素。草刈民代に宮澤エマ、堀内敬子と、クセもアクも握力も強いが料理はしない女たちが和田家の男たちを骨抜きにしていく(はず)。
さらに、優の母(小池栄子)の事故死の経緯を蔵之介が語ったあたりで「お、これはリベンジすんのか? 3世代共闘か?」と思わせた「復讐劇」要素もある。
私が確実に引き込まれたのは、週刊誌編集長役の堀内が嫌味を炸裂させた6話。「ダメ出し」要素である。オールドメディアがそっぽ向かれる理由を、理路整然と叩きつけたのだ。
「新聞やテレビが週刊誌の後追いをしているだけ」「週刊誌は警察でも裁判所でもない。正義をふりかざす気はハナからない」「週刊誌は記者クラブのようなものがないからこそできる自由な報道に懸けている」「テレビの人も国に忖度していないでやるべきことをやる覚悟が必要」「一番ダメなのはテレビ」といったテレビへのダメ出しを、蔵之介への愛の告白にすり替える堀内の妙、いや、脚本の妙。
新聞の驕りと胡坐(あぐら)、テレビの不自由さ、週刊誌の鉄面皮、そしてWebの存在の不確かさ。これを一家総出で体現するという無謀な取り組みが思いのほかうまくいっている。ラストはすべての要素が心地よく合体すると思う。複数の具が入ったバクダンおにぎりのようで、食べ応えがあるのよ。