巨人に大型契約でFA移籍したが…あっという間に「不良債権化」した選手列伝

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大きく成績ダウン

 2年連続二桁勝利を挙げたのに、FA移籍後、惨憺たる成績に終わったのが、門倉健だ。横浜時代の06年オフ、「(チーム最多の)10勝したのに評価が低過ぎる。必要としてくれる球団があれば、どこへでも行く」と11月7日にFA権行使を表明。横浜と残留交渉を続ける一方、複数の米球団と交渉したが、同27日に巨人が獲得に動くと、一転国内残留へ。

 その後、横浜も「せいぜいあと2年の投手だし、10勝しても10敗する投手は要らない」(球団フロントの一人)と交渉を打ち切ったことから、12月11日、2年契約の年俸2億円プラス出来高で巨人入りが決まった。

「人気球団で大きなプレッシャーを感じるが、その分やりがいがある。自分の明るいキャラクターを前面に出して、日本一、アジア一に少しでも貢献できるよう頑張りたい」と力強く抱負を語った門倉だったが、翌07年は1勝5敗、防御率5.97と大きく成績ダウン。2年目もリリーフで11試合に登板しただけで、6月以降は2軍暮らしが続き、自由契約になった。

 2年間でわずか1勝2ホールド。門倉の人的補償で横浜に放出された工藤公康が移籍1年目に7勝を挙げたのも、皮肉なめぐり合わせだった。

戦力外通告を受けて引退

 ソフトバンク時代の11年の日本シリーズで鮮やかな“無死満塁斬り”を演じ、日本一に貢献した森福允彦も、巨人では活躍できなかった。

 主に対左用のワンポイントリリーフで50試合に登板した16年オフ、「自分の置かれている立場に満足していないので、一番輝ける場所で野球がしたい」とFA宣言。

 山口鉄也との“勝利の方程式”を当て込んだ巨人が公示翌日の11月11日に早くも入団交渉を開始し、残留を要請するソフトバンクとの“綱引き”となったが、12月5日、2年総額4億円で、「子供のころから憧れていた」巨人への入団が決まる。

「山口鉄さん、戸根(千秋)はライバルであり、チームメイトになる。負けないよう頑張ります」と“中継ぎ左腕トリオ”で切磋琢磨していくことを表明した森福だったが、翌17年は8月以降2軍暮らしが続くなど30試合登板にとどまり、1勝3敗6ホールド、防御率3.05と十分期待に応えられなかった。さらに2年目は2試合、3年目も7試合登板に終わり、シーズン後に戦力外通告を受けると、そのまま引退した。

 西武時代に二桁勝利2度の野上亮磨も、3年総額4億5000万円といわれた大型契約で巨人にFA移籍したものの、1年目の4勝4敗が最高。4年目の今季限りで引退した。このほか、DeNAから移籍してきた井納と梶谷は今シーズン、それぞれ1億円、2億円の年俸に見合うだけの成績を残せなかった。

 巨人のFA補強は、他球団の主力を引き抜くことによって、ライバルチームを戦力ダウンさせる(または強化を阻止する)一面も否定できないが、長年応援してきた選手が、ポジションの重複から巨大戦力の中に埋もれる姿を見せられるのは、ファンにとってもやるせない。“真の補強”とは何かということを、痛切に考えさせられる。

※契約年数と金額はいずれも推定

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2021」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮編集部

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