米中の板挟みは勘弁… 急浮上した難題「経済安全保障」は経済界にとって諸刃の剣
「経済安全保障はこれからの時代の成長戦略という点においても極めて重要である」
岸田文雄首相は12月3日、防衛・経済安全保障に関するシンポジウムでこのように述べた。
首相が掲げる「新たな資本主義」の成長戦略は「官と民が役割分担をしながら、成長に向けた大胆な投資を行う」ことだ。その投資の対象として「経済安全保障も大変重要な分野にある」と説明し、先月の閣議で決定した、半導体工場の国内立地を推進するための6600億円規模の支援を盛り込んだことに言及した。
政府は6日、先端半導体工場の新設や増設を支援するための関連法改正案を閣議決定し、12月に召集された臨時国会での成立を目指す構えだ。法案では事業者が提出した投資計画書を政府が認定すると規定しており、認定には(1)需給逼迫時の増産対応や研究開発を含む国内での安定的な生産(2)技術情報の適切な管理などの基準を満たす必要がある。
経済安全保障とは経済的手段によって安全保障の実現を目指すという考え方だ。岸田内閣で経済安全保障という課題が急浮上したのは、米国と中国がそれぞれの経済安全保障政策を掲げて覇権競争に突入したという世界情勢が大きく関係している。
米国は知的財産の海外流出を防ぐ「重要・新興技術国家戦略」を2020年に策定し、半導体の工場・設備を国内へ導入することを支援するために「2021年国防授権法」を制定した(1件当たり最大3000億円の補助金を支給)。中国も2015年に策定された「中国製造2025」で、半導体の内製化を進める計画を示し(半導体関連技術に5兆円超の大規模投資を実施)、2020年に国の安全と利益を守るための「輸出管理法」を制定した。EUも2030年に向けたデジタル戦略を発表している。
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