憲法改正の本音を改憲勢力4政党のキーマンが語る 硬直する自民…国民・玉木代表は「野党も議論すべき」

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「公権力が自由に私権制限できる現状が問題」

 他方、玉木氏は自民党の訴える9条改正について、「実務面から見れば改正の必要性はなくなっている」と説く。安倍政権は2014年に閣議決定をもって、集団的自衛権の行使を認める憲法の解釈変更を行っているため、

「喩えて言えば、ライオンはすでに檻の外に出てしまっているわけです。そのため、単に古い檻を守る議論にはもはや意味がない。いま必要なのは新たな檻をどう作るのか、つまり、軍事的公権力の行使をどこまで認めるのかという議論です。また、自民党が主張するような、単に政府の権限を強化するだけの緊急事態条項の創設には反対です。むしろ、公権力が自由に私権制限できてしまう現状の方が問題です」

 実際、コロナ禍では何度となく緊急事態宣言が繰り返されており、

「何カ月にもわたって営業の自由が奪われ、十分な補償もないまま私権制限が行われました。その意味で、権力の行使に一定の歯止めをかけるための基本ルール作りは重要になる。そうした観点での緊急事態条項の議論は国会でやるべきでしょう。憲法以外の法律は国民を規制しますが、憲法は公権力を縛る法です。だからこそ、国民と共に議論しながら作り上げることが大事なんです」

ハト派総理への期待と不安

 では、党の基本政策で、〈憲法9条についても、平和主義・戦争放棄は堅持した上で、正面から改正議論を行います〉と謳う維新はどうか。馬場氏が語る。

「9条改正に関して新しい条文立てをする、2項を削除する、3項を追加するなど、かなり争点が絞られています。ただ、改憲に向けて9条を最優先させるべきとまでは考えていません。緊急事態条項にしても、非常時における国会議員の身分や任期をどうするのかって話で進めるんなら、それは悪手ですよ。史上初の国民投票で、国民の暮らしや問題意識と乖離したテーマを持ち出しても“自分らには関係あらへんがな”と受け取られてしまうだけ。それよりも、高校・大学までを含めた教育無償化や、道州制の導入で東京一極集中を是正する統治機構改革といったテーマを先行させるべきやと思いますね」

 かように国会外では百家争鳴の状態。反対勢力を押し切ったとして、改憲勢力のなかで合意を形成することは困難な作業と言わざるを得ない。だが、中国や北朝鮮をはじめとする周辺国の情勢が大きく変化し、歴史的な疫禍にも見舞われている現在、国家の根幹を成す憲法を問い直す議論は不可欠だろう。先の玉木氏は、

「これまで立民や共産は“安倍政権下での改憲”に強く反対してきました。その点、ハト派とされる岸田総理が就任したことで冷静に議論を進められる環境になったのは事実。今後は野党も議論そのものを否定してはなりません」

 と期待を滲ませる。

 だが、馬場氏は自民党の姿勢に少々懐疑的だ。

「自民党が積極的になれへん理由のひとつは、国民投票を行ったものの否決されてしまった場合に、時の政権が吹っ飛ぶんじゃないかという恐怖感にあると思うんです。一世一代の大勝負というかね」

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