銀座の老舗「文壇バー」が異例の移転 ママが語る「銀座事情」と「新しい試み」

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フリースペースサロンの試みも

「ザボン」は追い出されたわけではない。引っ越しを余儀なくされたのは、ビルが耐震基準を満たしていなかったという理由だった。

 一方、働く女性の人手不足は深刻で、悩まされているという。

「緊急事態宣言が発令されると店を閉め、解除されると店を開けるわけですが、お客さんが少ないので女の子も当番制のようにして出勤してもらいました。毎日出られるわけではありませんから、収入が激減してしまいます。やっぱり引き留めることが難しく、辞めて故郷に帰り、結婚したという女性が多かったですね」

 いったんはコロナ禍が下火になっても、女性の“恐怖心”は残ってしまう。

「接客業そのものに疑問を抱く女性も増えています。お客さんはマスクをせず、お酒を飲みながら会話を楽しまれる。その側にいるのは……というわけです」(同・水口ママ)

 しかし、最近は感染者数も激減した。歯を食いしばって営業を続けていると、客層が広がるようになったという。

「引っ越しやコロナ禍を報じるニュースで、『ザボン』が取り上げられることが増えたからか、財界や自営業の方々が興味をお持ちになり、お店に来てくださるようになりました。口幅ったいことを言うわけではありませんが、銀座の飲食店街は立派な文化の一つだと思っています。高級ブティックや高級レストランばかりじゃつまらないですよ。サラリーマンの方も銀座の焼鳥屋さんで一杯やりたいはずです。銀座のネオン街で働く一人として、私もできるだけ長く店を続けていくつもりです」

 新しい試みとして、午後2時半から午後7時まで、予約をすれば店内を自由に使えるサービスも始めた。利用料金は1人5000円。アルコールも含めて飲み放題だ。

 銀座の文壇バーの店内へ、紹介なし、格安の料金で入れるのだから、貴重な体験であることは間違いない。

 Wi-Fiも完備なのでリモートワークに使うこともできる。句会やサークルの会合など、会議室の代わりにしても面白いかもしれない。

デイリー新潮編集部

2021年12月12日掲載

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