映画・ドラマ制作者3人に聞いた「うまい演技とは何か」「うまい俳優の実名」
うまい俳優とは
そもそも、うまい俳優とは、どんな存在なのだろう?
「まず、うまい俳優は2通りあります。『特定の役をやらせると天下一品の人』と『どんな役でも出来てしまう人』です」(同)
前者の「特定の役をやらせたら天下一品」の代表格は誰か。
「亡くなった丹波(哲郎)ちゃんですね。丹波ちゃんは時代劇で加藤清正とかやると抜群にいい。だけど普通の善人をやってもらうと、面白くもなんともないんですよ(笑)」(同)
監督自身は丹波さんを「制覇」(1982年)など数々の作品で起用した。貫禄のある人物が似合った。
では「どんな役でも出来てしまう人」とは、どういうタイプの俳優だろう。
「ほとんどが劇団出身者。邦さんもそうでしたが、演技の基礎が出来ていますから、何でも演じられるんです。そもそも劇団は限られた人数の俳優でお芝居をしているので、何でも演じられないとやっていけない。劇団の俳優だと40代でおじいさん役をやることもありますからね」(同)
早大生時代から本格的に演劇をやっていた堺雅人(48)らの台頭もうなずける。往年の映画界は全く違うという。
「映画界は入った時点で二枚目なら、最後まで二枚目ですから。途中から二枚目半をやることはあっても脇役にはならない。やろうとしたって無理ですから。ここが劇団から来た人との大きな違いです」(同)
基本的に育成はしないというところは現在のドラマ界と共通する。アイドル的俳優が中年期で失速することが目立つ一方、デビュー後の低迷期に故・つかこうへいさんの下で演劇を学んだ阿部寛(57)らが成功しているのは腑に落ちる。
中島監督はうまい俳優として山崎努(85)も挙げた。
「うまく年を積み重ねられましたね。この人も劇団出身だから基本的演技力がある上、年を重ねるごとに演技力を磨きました」(同)
若き日の山崎は俳優座養成所を経て文学座に入った。
「ただし昔も今も山崎さんの演技の間などは一緒。『若いころの演技とはまったく違う』という俳優はいません。必ず自分の演技を引きずり続けます。その自分の演技を磨き、さらに年輪を加えられるかどうかなんです」(同)
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