世界王座獲得「尾川堅一」の波乱万丈すぎる4年間 ドーピングで王位剥奪、コロナで試合が連続で中止に

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幸運であの殿堂

 第1波、第2波で試合はできず。20年10月、延期された試合が行われ、ようやく勝ち星を積む。そして、第3波が収まった今年2月。ここから運気が好転する。

「前回と別のIBF同級王者が防衛戦で体重超過して王座を剥奪され、またもや空位になったんです。しかも、今回も2位が空位で、3位の尾川に王座決定戦が回ってきた。その上、対戦予定の1位選手が直前で怪我してしまいました」

 結果、後に2位になったアジンガ・フジレ(25)なる選手と王座決定戦を行うことになった。4年前と同様、今回も王者や1位選手と拳を交えずに王者になる機会を得たのだから、よくよくラッキーな男だ。

 しかし、彼にとって何よりの僥倖は、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)で試合ができたことである。

「フジレ戦は当初、日本国内で行う予定でした。ところが、長期隔離など入国管理が不透明な日本での開催にフジレ側が難色を示した。そこでやむなく海外での興行を模索した結果、MSGでのイベントに組み込んでもらえたのだそうです」

“格闘技の殿堂”というべきMSGのリングに立つこと自体、日本人2人目の得難い栄誉である。

 ちなみに、フジレは南アフリカの選手。南アといえば今、世界を震撼させている“オミクロン株”の発生源とされている。当然ながら日本への入国は制限されており、仮にフジレ戦の日本開催を強行していたら、これまた試合がキャンセルされていた可能性がある。

 さて、11月27日に行われた大一番は、3度のダウンを奪った尾川が3-0で判定勝ちし、再びチャンピオンベルトを獲得。“日本人初のMSG勝利”という煽り文句が加わり、前回よりも大きく報じられた。

週刊新潮 2021年12月9日号掲載

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