「K防疫のまやかし」から韓国人は目覚めるか 幼いナショナリズムが生む国家の蹉跌
「韓国の死亡者は少ない」は本当?
――でも、死亡者数は韓国の方が少ない。
鈴置:それこそ怪しいのです。2021年12月10日時点の韓国のコロナによる累積死亡者は4130人。一方、日本は12月8日時点で18361人。日本の人口は韓国の約2・5倍ありますから、韓国の規模に換算すると7344人。政府発表を信用すれば、確かに、人口を勘案した韓国の累計死亡数は日本の56%程度に留まっています。
こうしたデータから「韓国すごいぞ!日本は負けている!」と言う日本の韓国専門家もいます。でも、データ分析の専門家の間では韓国政府発表のコロナ死亡数は疑惑の目で見られています。2020年の日本の超過死亡者数がマイナスだったのと比べ、韓国のそれはプラスだったからです。
2020年1年間の日本の死亡数は前年に比べ9373人(0・7%)減りました。高齢化により死亡数は年に2万人ぐらいずつ増えていたことを考えると、実質的には約3万人減った計算になります。
日経新聞の「国内死亡数、11年ぶり減 コロナ予防で他の感染症も抑制」(2021年3月29日)によると、専門家はコロナ対策のための手洗い励行やマスク着用で、コロナ以外の感染症による死亡が減ったと見ています。
一方、韓国の死亡数は前年に比べ9838人(3・3%)増えました。韓国も高齢化で死亡者が年平均2%増えていますが、これと比べても明らかに多かったのです。
その差の1・3%の人がコロナで死亡したとすると、3875人になります。ところが韓国政府の発表によると2020年1年間のコロナによる死亡者は917人に過ぎません。実際の4分の1程度に見せかける、過少計上の可能性があります。
そして、この割合を適用して現時点までの「本当の死亡数」を計算すると約16520人。人口規模を考えれば、日本の2倍以上になります。
政府も病院も国民も「グル」
――過少計上の仕組みは?
鈴置:糖尿病など既往症のある人がコロナで死亡した場合、政府の統計では既往症で死んだことになっているケースもありそうです。ある韓国の知人は「家族が亡くなった際、コロナだと外聞が悪い。医師に頼んで既往症など別の理由での死亡診断書を書いてもらう人も多い」と私に語っています。
中央日報のチャン・セジョン論説委員は2020年4月15日の総選挙前に検査数が急減したのは新規感染者数を減らすためではないか、と指摘しました。
その記事「総選挙目前に魔法のように急減…『コロナ検査縮小』疑惑の真実は」(2020年4月13日、韓国語版)の中で「検査を実施せず、陽性者を出さなければ病院側も最低2週間の営業停止を食わずに済む」との公立病院の医師の談話を紹介しています。
過少計上は政府だけではなく、国民や病院も「グル」になっての仕業ということになります。韓国は日本人が想像できないほどに、融通が効く社会なのです。
――しかし、そうした事情は韓国の記者なら分かっているはずです。
鈴置:そこで、韓国政府――統計庁はもう一段の煙幕を張っています。「2019年と比べれば死亡数は3・3%増えたが、2017―2019年の3年間の平均と比べれば、さほど多いわけではない」との弁解です。
一見それらしいのですが、2018年の韓国は厳しい寒波に襲われ、前年比で4・7%も死亡者が増えた「異常年」でした。これを紛れ込ませた「平均」と比べて「さほど多くはない」と言い張っても説得力はないのですが……。
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