「K防疫のまやかし」から韓国人は目覚めるか 幼いナショナリズムが生む国家の蹉跌
米国でお墨付きのK防疫
――検査数が多いと「優秀な国」なのでしょうか?
鈴置:むしろ逆でしょう。大邱に巨大なクラスターが発生したからこそ、大量の検査を余儀なくされたのです。「検査数が少ない」と韓国人に馬鹿にされた日本は当時、クルーズ船以外で大きなクラスターが発生しておらず、大量検査の必要がなかったに過ぎません。
日本でも「韓国では望む人は誰でも検査を受けられる」といった情報が流されましたが、まったくの誤りです。少なくともこの頃は「検査対象は濃厚接触者に限る」とのルールだったのです(「コロナ対策で『文在寅』の人気急上昇 選挙を控え『韓国すごいぞ!』と国民を“洗脳”」参照)。
検査は医療関係者に大きな負担をかけるからです。大邱のクラスターの全容が解明できた4月初めには、検査数はいったん減っています。同月末には「余計な検査は止めるべきだ」との意見も出ました(「『防疫で世界を先導』と胸を張る文在寅、『反面教師に』と冷ややかな安倍晋三」参照)。
――「検査大国」のからくりを韓国人は見抜いたのですか?
鈴置:いいえ。政府の宣伝を素直に受け入れ、自己満足にひたったのです。韓国人は嘘でもいいから「世界で冠たる韓国」「日本人よりも優秀な韓国人」という神話を信じたいのです。
4月15日に実施された総選挙でも、少し前までの予想を裏切って与党「共に民主党」が圧勝しました。大邱のクラスターの終息期とも重なって、文在寅政権のプロパガンダが奏功したのです。
調子に乗った文在寅政権は検査数と共に「感染拡大を起こさなかった選挙」を世界に向け宣伝しました。この頃、米国では感染が広がり始めていましたから、CNNなど反トランプ(Donald Trump)メディアが「無策な」米政権を攻撃する際には「韓国方式」を褒め称えました。この情報が逆輸入され、「世界で称賛されるK防疫」というキャッチフレーズが韓国で定着したのです。
異物混入のK注射器
この後も文在寅政権はK防疫のバリエーションを編み出しました。先端の隙間をなくすことにより、瓶の中のワクチンを完全に吸い上げる「K注射器」。スマホなどITによる位置情報を利用した濃厚接触者への警告システムなどです。いずれも「日本には存在しない、我々の優秀さを示す証拠」として韓国メディアは宣伝しました。
もっとも、いずれも「オチ」が付いていて、「K注射器」は品質管理の甘さから異物の混入事件が多発。スマホ利用の警告システムは泣かず飛ばずに終わりました。この時期のコロナ株は感染力がさほど強くなく、映画館の席で隣り合ったぐらいではうつらなかったためと思われます。
大声で歌って踊るクラブのような場所では効果があるのかもしれませんが、こういう場にはスマホのスイッチを切って入る人も多い。どこで遊んでいるかまで、政府に知られたくはないからです。
実際、2020年5月にゲイの集まるソウルのクラブで感染者が発生した時、保健当局は入場者をなかなか追跡できなくて困惑しました(「韓国は『防疫の模範』が裏目でクラスター、それでも『世界を先導』という自己暗示」参照)。
外から見れば、早々にK防疫はその馬脚を現していたのですが、韓国人のほとんどが神話を信じ続けてきたのです。
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