売れっ子子役から地下アイドル、AV女優に…営業職も始めた「27歳女性」が最近感じること

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月に1本のペースで撮影、そして意外な“副業”も…

 紗理奈が企画女優として活動をはじめ、3年以上になる。いくつかの芸名を使い分け、出演作数は100本以上の作品に出ている。彼女のような企画女優は複数の女優が出演するのが一般的で、しかも彼女が出るのは、ここで書くのがはばかられるようなハードな内容ばかり。だが、あっけらかんとしている。

「AVの仕事って、最初の数ヶ月で仕事が切れて無くなるのが当たり前なんです。続けて行くにはNGを減らすことしかない。つまり、他の女の子が嫌でやりたくないことをやっていくしかないんですよね。そういうことを続けているうちに分かってきて。NGだと思った仕事も『意外と平気じゃん』ってなって。それで今では月に一本のペースで仕事はきます」

 そして実はいま、ある大手企業の営業職として働いている。間もなくボーナスが出るのが楽しみだと言う。

「きっかけはコロナで現場が全部バラシになったからですね。『AVなんてすっごい濃厚接触しかないじゃん』って。コロナの終息なんて誰も分からないじゃないですか。その時に、昔から付き合いがあった方から来ない?って誘われたんです。営業だから結果さえだせば時間の自由が利くし、ということで。さすがに職場の方々にはAVに出ていることは伏せていますけれど」

 趣味は貯金。都内の中古マンションが軽く買える金額が貯まっているという。最近の20代、30代の女性を取材すると、彼女のように、生活には何の苦労もない実家住まいの子が多い。かつての私がそうだったように、地方から出てきて生活のために“究極の選択”として売春をする女性たちの立場がないではないか……。

 話を聞く限りでは、アダルトの仕事にも誇りをもってやっているようだ。でも、何故だろうか。彼女は「日常生活」でも何かを演じているように見える。その「演じる」ことを糧に生きている。

「会社員になって余計にAVとかが自分の中で大きくなって。会社員の仕事って誰でも良い、私じゃなくても全然良い。でも、撮影は私じゃなくちゃいけない。作品の中で常に必要とされていたいんです」

 別れ際にそう言った彼女の言葉。それすらもどこかに書いてあった言葉にしか思えない。彼女の言うことは「台本」のセリフにしか感じないのは、私だけだろうか。

酒井あゆみ(さかい・あゆみ)
福島県生まれ。上京後、18歳で夜の世界に入り、様々な業種を経験。23歳で引退し、作家に。近著に『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』ほか、主な著作に『売る男、買う女』『東電OL禁断の25時』など。Twitter: @muchiuna

デイリー新潮編集部

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