韓国で2人目のノーベル平和賞に執念を燃やす文大統領 「南北の終戦宣言」のために「北の誠意に報いない米国を挑発」
支持率は83%→38%
文大統領の任期は残すところ5か月。南北首脳会談直後に83.0%もあった支持率は、2021年12月1日時点で38%となり半分にも満たない。しかし大統領はまだ諦めていない。在任中に何としてでも南北関係の“発展”“前進”を目指しており、活発に行動を起こしている。仮に南北が終戦宣言を行うなら、金大中(キム・デジュン)第15代大統領に続いて韓国で2人目となるノーベル平和賞を受賞する可能性もゼロではない。現地在住・羽田真代氏のレポート。
2018年、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領にノーベル平和賞を」と望む声が韓国内で高まっていた。同年4月27日に文大統領が南北首脳会談を“成功”させたからだ。世界が大統領の一挙手一投足に注目する充実したひとときだったと言えるだろう。
英国のブックメーカーの予想で南北両首脳は「ノーベル平和賞の本命」に擬せられていた。受賞ムードが高まった韓国では、大韓弁護士協会などが中心となって推進委員会を立ち上げようとする動きもあったほどだ。しかし、蓋を開けると、両首脳はもちろんのこと、会談を仲介したとされる米国のトランプ前大統領も受賞を逃した。
南北関係が進展しないのは米国に責任がある
過去に平和賞を1回受賞しただけの韓国にとって、ノーベル賞への執着心は凄まじい。浦項(ポハン)工科大学校には、名だたる科学者の胸像がずらりと並ぶなか1つだけ胸像がなく、「未来の韓国人科学者」と書かれた台座のみがあるのはよく知られている。
金大中元大統領の受賞は、「約半世紀に及ぶ分断を経て歴史的な南北首脳会談を成功させ、南北の和解と協力に向けた新たな潮流を生み出したこと」が評価されてのものだった。
ノーベル平和賞を狙う文大統領にとって、受賞を確かなものとするためにも金元大統領以上の功績が欲しいところだ。
その尖兵のひとりとなったのが、韓国のホン・ヒョンイク国立外交員院長だった。
11月30日、訪米中のホン氏は米シンクタンクが開催したセミナーで「南北が終戦宣言できない状態が続くようであれば、来年の夏はとても危険な夏になるだろう」と述べた。
ホン氏は続けて、「北朝鮮は来年2月の北京五輪と3月に行われる韓国大統領選挙までは大人しくしているだろうが、その後は黙っていないだろう」「終戦宣言をしなければ、北朝鮮は挑発行動に出る」「米国は北朝鮮が核放棄できる機会を与えなければならない。その最初の段階で終戦宣言を行うことが文大統領の提案だ」「北朝鮮が豊渓里(プンゲリ)核実験場の廃棄と中長距離ミサイル発射の停止などの誠意を見せたが、米国は何の相応措置をしていない」などと訴え、南北関係が進展しないのは米国に責任があるかのように主張したのだった。
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