元ヤクザがフィリピンのスラム街で困窮生活…衝撃のドキュメンタリー「なれのはて」監督インタビュー

エンタメ 映画

  • ブックマーク

見つけた身を置く“隙間”

 監督は4人の生き方すべてが印象的だったと話すが、なかでも「強烈におもしろい」と感じたのは、犯罪を起こして日本から逃げてきたと話す元ヤクザの谷口さんだった。彼は自転車屋の軒先で暮らす路上生活者。常に怒ったような口調で能弁に語る姿が印象的だ。

「自転車屋に日本人が居候しているらしいと聞いたので訪ねてみると、こんなところで生きているんだ……と、驚愕しました。谷口さんは『我が人生、悔いだらけ』と話し、死に場所を求めているような感じもあるのに、小さな希望を見出していたんです。自転車のパーツを日本からフィリピンに輸入する仕事を手伝っていて、そこに生きがいとまでは言わないまでも、ほんのわずかな希望のようなものを感じていたようです」

 4人の中には衝撃的な最後を迎える人もいる。

「フィリピン人と結婚した平山さんは本当に幸せそうで、憧れさえ抱きました。自分たちも食べることができていないというのに、親戚の子たちも預かって大丈夫なのかなと思っていたのですが、料金を払えなくて電気を止められても、楽しそうに生活していて……。

 それぞれの“結末”は映画でご覧いただくとして、彼らはフィリピンのカオスの中に居場所を見つけていました。4人の生きざまを通じて多くの人が“幸せの価値”について考えるきっかけになればと思っています」

粂田剛(くめた・つよし)
1969年愛知県生まれ。フリーの助監督として矢崎仁司「ストロベリーショートケイクス」(2006年)、松井良彦「どこに行くの?」(2008年)などに参加する。テレビ番組のディレクターとしては「フランケンシュタインの誘惑 クローン人間の恐怖」(NHK BSプレミアム)、「ザ・ノンフィクション シフォンケーキを売るふたり」(フジテレビ)などを演出。映画「なれのはて」で、2020東京ドキュメンタリー映画祭長編部門グランプリ・観客賞を受賞した。姉妹編「ベイウォーク」が12月11日、東京ドキュメンタリー映画祭2021で上映予定。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。