日大事件の教訓はどこへ…「学校法人ガバナンス改革」を私大経営者と文科省が骨抜きにしようとしている

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税金をむしり取る鉄のトライアングル

 にもかかわらず、報告書をつぶそうとするのはなぜか。

「学校法人は理事長に権限が集中していて、何でもできます。理事もイエスマンで固め、評議員会もけん制機能をもっていません。日本大学の田中英寿理事長(逮捕後辞任)が、元理事の井ノ口忠男被告から妻などを介して多額の現金を受け取っていたのではないかと見られていますが、他の大学でも似たようなことが繰り返しおきています。ガバナンスの仕組み自体に欠陥があるのです」(同)

 もともとこの改革会議が設置されたのは、相次ぐ不祥事を受けて政治が動かざるを得なくなったためだ。そのため、財団法人や社会福祉法人など他の公益法人と同等のガバナンスを導入すると骨太の方針に盛り込まれ、閣議決定されてもいる。

「ところが、文科省はまったくやる気がなく、3月に報告書を出した有識者会議でも踏み込んだ改革案は示せませんでした。大学経営者がメンバーに入り、反対していたので当然です。そこで、今回の会議は政治主導で大臣直属の会議体として設置され、弁護士や会計士、学者などガバナンスに詳しい専門家だけが集められました」(同)

 世間一般から見れば、学校法人の改革は当然のことと思えるが、大手新聞の文科省担当記者は、「改革できるかどうか、微妙なところでしょう」と語る。

「改革会議は萩生田光一前文科相が事務方を抑えて設置させたのですが、岸田内閣で就任した末松信介文科相はまだ状況がつかめていないようです。大臣の記者会見でも事務方の振り付け通り、『改革会議の報告書はひとつの意見』と発言していました。要は“参考程度”にするということなのでしょう。しかも、大臣に報告書を手交することになっているのに、座長が繰り返し求めても事務方は日程調整もせず、記者会見も設定しない『抵抗』に出ているそうです。自民党の文科部会でも『(報告書の)改革案を白紙に戻せ』といった声が出ており、大学経営者からの働きかけを受けて反対に回る議員は多そうです。政治と官僚と大学経営者の“政官業の癒着”と言っても過言ではありません。まさに鉄のトライアングルが国民のカネをむしり取っている構図と言えます」

デイリー新潮編集部

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