欧米はワクチン追加接種がメインなのに…日本はなぜ「オミクロン鎖国」を行ったのか

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「コロナ前」に戻るのに日本は遅れる?

 日本のワクチン接種は当初こそ後れをとったものの、今やG7諸国で最も高い接種率となっている。しかし、感染者・死者数が桁違いに減り、人流を制限する国内措置が撤廃されたのにもかかわらず、なかなか経済活動は活性化しない。世間の目を気にしているゆえか、忘年会を実施する企業はほとんどないようだ。

 日本はパンデミック以降、死者数抑制のために多大な経済損失を受容してきたことが、仲田泰祐・東京大学准教授の分析で明らかになっている(12月3日付日本経済新聞)。

 それによれば、コロナ死者数を1人減少させるために日本は約20億円の経済的犠牲を払ったのに対し、米国は約1億円、英国は約0.5億円だ。また、日本国内でも地域により大きな違いがあり、東京都・大阪府では約5億円だが、鳥取・島根両県では500億円以上となっている。この違いには「定量化できないリスクへの態度」や「社会の同調圧力」など様々な要素が関係していると思われるが、オミクロン株への強固な水際対策は、これまでの日本の傾向を継承していると言っても過言ではない。このような状況が続く限り、日本は他国と比べてコロナ以前の生活に戻るのに時間がかかってしまうのではないだろうか。

ベビーブームに沸く米国

 今年の夏頃、「パンデミックがもたらす出生率の落ち込みで2021年の米国の人口は史上初めて減少する」との予測が出ていた。だが蓋をあけてみれば「ベビーブームに沸いている」という驚きの事実が伝わってきている。

 実際、バンク・オブ・アメリカが今年10月に実施した調査によると、米国で出生率が上昇しているという。子どもを持つことは非常に大きな決断が必要であり、明るい未来が待っているという確信がなければできることではない。日本から見ると米国の分断は日に日に深刻化しているとの印象が強い。たとえば、妊娠中絶禁止の是非を巡っても民主・共和党間の対立が激化している。このような状況にあっても、ミレニアル世代の「未来は自らの力で切り開く」という意識が「これから先はもっと良い日々がやっている」という希望を生み出しているのだ。

 一方、日本は米国に比べて社会は安定しているように思える。だが若者が将来に自信を持っているとは思えない。コロナ禍で傷ついた若者が希望を持てる社会にならなければ、感染者数が劇的に減少したとしても、「コロナを克服した」と言えないのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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