元公安警察官は見た 某駐日大使館の国旗がある日突然、新しいデザインに…公安部が情報収集に動いたワケ
一色旗から三色旗へ
「2011年2月にエジプトのムバラク大統領がチュニジアのジャスミン革命(民主化運動)の影響で失脚し政権が代わった時、駐日エジプト大使館前には、日本にいるムバラク支持派と新政権支持派が大勢集まって、互いに罵り合っていました。このままではケンカになりかねないと、警察が出動する騒ぎとなりました」
勝丸氏は、大使館の受付と押し問答した末、ようやく「大使が会うからすぐ来て欲しい」との返事をもらったという。
「管轄署の警備課長らを同行させて大使館へ赴くと、独裁者と呼ばれた指導者が制定した一色の国旗ではなくて、反政府勢力の国民評議会が掲げる三色旗がたなびいていました」
勝丸氏は、大使に国旗が変わった理由を聞いた。
「大使は『我々は昨日まで国家元首の政権を代表する大使館でしたが、本日をもって国民評議会を代表する大使館になりました』と言い出しました。そこで私は、『これは重大なことですよ。外務省には報告しました?』と聞くと、『まだしていません。これからです』と」
新政権側から連絡が来て、政権交代を対外的に示すように指示されたという。
「新しい国旗は、都内の徽章屋に大至急作らせたそうです。大使館内は思ったよりも平静な様子で、日本にいる旧政権の支持派が抗議に来るという動きも特にありませんでした。日本のその国のコミュニティは小さく、大きなデモなどは起こせないということでした」
その1カ月後、ニューヨークの国連本部に掲げられているこの国の国旗も三色旗に変えられた。日本の外務省が国家として承認したのは、さらにその2カ月後だった。
「大使館に掲げられている国旗がある日突然変わるなんて前代未聞のことです。当時の大使は密かに新しい政権を歓迎していたということでしょうね」
大使はその後も日本に残ったが、大使を含め4人いた外交官のうち1名だけ帰国した。
「その外交官は、前政権の諜報機関から来た男性でした。彼の任務は外交官の身分を隠れ蓑にして、日本国内にいる自国民や自国の隣接国のコミュニティの動向をさぐることでした。前政権の手先だったわけですから、帰国しても新政権下で公務員を続けることはできません。帰国してその後どうなったことか……」
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