オミクロン株の重症化率、死亡率は高くない? ワクチン、治療薬は効くのか…専門家が解説

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30カ所の変異

 Q.なぜ感染しやすいのか? どんな特徴をもった変異株なのか?

「(ウイルスの表面に並ぶ突起を作る)Sタンパクに、30カ所の変異が確認されていて、そのなかで、より広がりやすい能力を獲得したのかもしれません。30カ所のうちいくつかが、ワクチンの効果や、抗体カクテル療法をはじめとした抗体薬などの効果に、なんらかの影響を及ぼしているとしたら、脅威になりえます」

 そう説明する寺嶋教授は、30という数について、

「デルタ株のときは、Sタンパクに関する主だった変異は4カ所でしたから、多いと思います」

 と続ける。だが、変異が多いというだけで恐れすぎないほうがいいかもしれない。埼玉医科大学の松井政則准教授が言う。

「30カ所という変異は、いままでよりは多いとはいえ、それ自体が重大な問題というわけではないと思います。従来の株よりは、ワクチンが効きにくくなることがあるかもしれませんが、そもそもSタンパクは、1200ほどのアミノ酸でできています。それが半分変わってしまえば、ワクチンがまったく効かなくなるかもしれませんが、そんなに変化したら感染できなくなって、ウイルス自体が死滅してしまう。30カ所の変異であれば、ウイルスが根本的に変わってしまうことは考えづらいです」

完全に止めるのは無理

 Q.では、いったいどうして、このような変異株が発生したのか?

 寺嶋教授は、

「一般的に、感染対策が不十分で、感染者数が多い国であればあるほど、変異が生まれやすい」

 と解説し、続ける。

「人のなかでウイルスがミスコピーを起こし、それがその人の体内で増え、まただれかに感染し、それぞれの体内で変異が繰り返されていきますが、感染者が多いほど、そうして広がる機会も多いと思います」

 南アは、2回のワクチン接種を終えた人の割合が低いのは先述の通りだが、ほかにも変異が起こりやすい要因があったようだ。

「南アはHIVの感染者が多く、免疫不全の人が多かったことも関係しているかもしれません。ある人の体内でAという変異が生まれ、それがその人のなかで増えても、普通は発症してから10日程度で、体内に免疫ができて、感染性が失われていきます。ところが、免疫不全の人は、ウイルスが体内で生き永らえ、AのあとA+B、A+B+Cと、変異が蓄積していく可能性が高まるのです」

 松井准教授も「仮説だ」と断ったうえで、言う。

「たしかに、今回の変異株はHIV感染者のなかに出てきたのではないか、という話はあります。ウイルスの変異は、人が生き延びようとするなかで起きる。体内にできた免疫がウイルスをやっつけようとし、ウイルスは免疫を逃れるように変異していきます。しかしHIVに感染すると、免疫が効かなくなる。体内で自由自在に変異が起こり、オミクロン株が生まれたのではないか、という話です」

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