オミクロン株の重症化率、死亡率は高くない? ワクチン、治療薬は効くのか…専門家が解説

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Sタンパクに30カ所の変異

 Q.実際、懸念されるほど感染力は強いのか?

「WHOのホームページには、ほかの変異株とくらべ、過去に新型コロナに感染している人でも感染しやすい、という旨が書いてあります。いままでに感染したことがあるからといって、油断できないと思います」

 と、矢野医師が釘をさす。京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授も言う。

「南アフリカの感染状況を見ると、デルタ株が収まったところに、感染者が急激に増え、オミクロン株があっという間に優勢になりました。従来の変異株は、これほど急激に優勢にはならず、少しずつほかの変異株に置き換わったので、オミクロン株は、感染拡大力が高い可能性があります」

 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授が補う。

「たとえば、日本は今年2月ごろから、従来株がアルファ株に置き換わり、それが6月以降、デルタ株に置き換わりました。より感染力が強い変異株がそれまでの株を凌駕することが、繰り返されてきたのです。そしていま、オミクロン株が確認された地域で、すでにそれに置き換わっている可能性があるのですから、うまく制御できなかった場合、世界的にどんどんオミクロン株に置き換わる可能性はあると思う。置き換わるのは感染力が強い証で、その意味で懸念されます」

毒性が強くなったと現時点では思えない

 Q.感染力が高くても、重症化リスクや死亡リスクが低ければいいが?

 寺嶋教授が続ける。

「発生して間もなく、重症化率が何%、死亡率が何%と数字を出すほど感染者がいないので、まだわからないのが現状です。重症化リスクは、症例の蓄積データなどを待つ必要があります。ただ、南アでは感染者は急増していても、それに伴って死者が増えているわけではないようです」

 東京大学名誉教授で食の安心・安全財団理事長の唐木英明氏も言う。

「南アの医師会長は、感染者が若いこともあるかもしれないが、一般に症状は軽いといえるのではないか、と発言しています」

 ウイルスは感染力が強くなると弱毒化する、ともいわれる。オミクロンにその可能性はないのか。愛知医科大学病院循環器内科の後藤礼司医師が指摘する。

「現状、南アで死に至るような重症化リスクは、2%程度に抑えられている。南アのワクチン2回接種率は24%程度。その国でいまのところ死亡率が大きく上昇していない以上、オミクロンは毒性が強くなったとは、現時点では思えません」

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