NHKの受信料には法的根拠がない? 判決の根拠を突き崩す事態が続出

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日本版Netflix

 NHKはNHKプラスという動画配信サービスを始めた。現在200万人が登録しているという。イギリスのBBCはすでにiPlayerという同様のサービスを始めている。はじめこそ登録者数を増やしたが、最近は頭打ちになっている。

 当然である。放送なら限られた公共の電波の既得権益に守られ、あまりライヴァルもいないが、動画配信サービスは前述の巨人たちが熾烈な競争を繰り広げている。そこではBBCといえども弱小事業体だ。それでもそこへ出ていかなければ座して死を待つのみ。ヨーロッパ各国の公共放送もBBCの後を追っている。

 NHKを含め日本の放送チャンネルも不可避的に通信に移行していかなければならない。全チャンネルが一緒になって日本版Netflixのようなものを作り、そこに優れたコンテンツを投入していかない限り、他国の動画配信サービスに伍して視聴者をひきつけることはできない。

 NHKを解体し、日本の放送業界を「通信の時代」にも生き残れるように再編成しなければならない。受信料を払うとすれば、あるいは国費を投入するとすれば、この日本版Netflixに対してだ。

 これまで日本のコンテンツ産業はテレビ放送産業に搾取されてきた。安く買いたたかれ、高視聴率を上げても何のボーナスもなかった。広告収入の慢性的減少によって、コンテンツ産業はテレビ放送産業によって制作費を抑えられ青息吐息になっている。動画配信ならば、ヒットを出せば次回作からは好条件で契約でき、収入の面で見かえりがある。そこに制作奨励金のようなものを出せばコンテンツ産業の強靭化になる。

「鬼滅の刃」の大ヒットで見えにくくなっているが、実は世界に誇る日本のアニメーション産業でも中国による「静かなる侵略」が進行している。手遅れにならないうちに根本的対策を打つ必要がある。

 新政権も、是非、この観点は忘れないでもらいたい。

有馬哲夫(ありまてつお)
早稲田大学教授。1953年生まれ。早稲田大学卒。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。メリーランド大学、オックスフォード大学などで客員教授を歴任。著書に『原発・正力・CIA』『歴史問題の正解』など。

週刊新潮 2021年12月2日号掲載

特集「『動画配信』全盛時代に逆行 岸田政権に忘れてもらっては困る『NHK』改革 いつまで国民に受信料を強制するのか」より

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