NHKの受信料には法的根拠がない? 判決の根拠を突き崩す事態が続出

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イラネッチケー訴訟

 次に少し前に話題になった「イラネッチケー訴訟」である。東京都文京区在住の女性が、NHKを相手どって、NHKの電波を減衰する装置(イラネッチケー)を取り付ければ、NHKと受信契約を結ぶ義務がないことの確認を求めて裁判を起こした。

 これに対し20年6月26日東京地裁は原告の訴えを認めた。つまり、イラネッチケーやそれに類したものを取り付ければNHKと受信契約を結ぶ義務はないということだ。

 NHKはこの判決に対してただちに控訴した。21年2月24日、控訴審は「受信できなくする機器を取り外したり、機能を働かせなくさせたりできる場合は、その難易を問わずNHKの受信設備にあたる」と判断、原告が敗訴した。

 しかも、驚いたことにこの判決は、公共放送と民間放送の二元体制を維持するためには、NHKを見ない人も受信料を負担することを放送法は求めていると述べている。

 実は「親判決」でも同様のことを言っている。「NHKは、民放との二本立て体制の一方を担う公共放送事業者として……テレビを設置する者全体に支えられる」と。また、21年の判決は、親判決の原理つまり「NHKだけが公共の福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的としている」、「NHKは民間放送とは違って営利を目的としない公共的性格を持っており、広告が禁じられているので受信料を徴収することができる」を踏襲しているのがわかる。

 電波を受信できるかどうかという技術的な点はほぼ無視していると言っていい。言い換えれば、地上波アナログの時代の論理で受信料の徴収を正当化している。

「最初からNHKの主張に乗るつもり」

 21年3月4日付「デイリー新潮」の「NHK受信料は税金と同じ扱い? イラネッチケー控訴審で書かれた理解不能な判決文」でも原告代理人の高池勝彦弁護士はこう言っている。

「まあ、高裁は最初からNHKの主張に乗るつもりだったということです。NHKは公共放送が設立された意義を申し立て、民放との二元体制の維持を主張しました。スポンサーを付けた民放に対し、スポンサーに影響されず受信料で賄われるNHKという2本があってこそ、バランスの取れた放送ができるというわけです。高裁もこの二元体制の維持に同調し、そのためには公平に支払わせるというわけです」

 高池氏が言うように、この判決は「最初からNHKの主張に乗るつもりだった」。つまり、公共放送とはなにか、なぜ二元体制が必要なのか、それを維持することが必要なのかという問いには全く答えていないし、考えてすらいないといえる。

 以上、受信料判決における時代錯誤な解釈を指摘したが、放送から通信への移行が進んでいる現在では、さらに判決の根拠を突き崩す事態が進行している。

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