フランス当局が日本人妻に逮捕状 夫は東京五輪中に「ハンガーストライキ」で“連れ去り被害”を訴えていた

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2700件を超える書き込み

 ヴィンセント氏の代理人である上野晃弁護士によると、子の連れ去り事案でフランス当局から日本人に逮捕状が出るのは、異例のことだという。しかし、見通しはそれほど明るくない。フランスの裁判所から逮捕状が出されたとしても、フランス国内において有効なだけで、日本で逮捕されるわけではない。また、日本とフランスは「犯罪人引き渡し条約」を締結していない。つまり、この逮捕状によって、ヴィンセント氏の問題が即、解決するわけではないのである。そして、今回のように外国がどれだけ強い姿勢を見せても、日本で裁判所の運用が変わる気配はまったくないという。

「子どもを別居親と会わせないでいれば、親権獲得に有利になるという不条理な運用を改めないと、世界から今後ますます激しい非難を受けることになるでしょう。裁判所は、子どもと友好的な関係を築くことができる方の親が親権者にふさわしいとする『フレンドリーペアレントルール』を早急に導入すべきです。2014年に民法766条が改正され、面会交流と養育費の文言が明記されました。そのような形で『フレンドリーペアレントルール』を条文に採用するべきだと思います」(上野弁護士)

 立法化されるには、議員を動かす民意の高まりが必要だ。ヴィンセント氏の妻に出された逮捕状のニュースはネット上では関心が高く、共同通信の当該記事のYahoo!ニュースでは、1日で2700を超える書き込みがあった。

 加えて、今回の動きのような「外圧」も必要であろう。昨年、欧州議会では、日本国内の「子どもの連れ去り」について、圧倒的賛成多数で非難決議が行われた。また、国連の子どもの権利委員からは、共同親権立法勧告も出されている。日本が何かしらの対応を迫られているのは事実なのだ。

 私たち一人ひとりがこの問題に関心を寄せることが、ヴィンセント氏をはじめとする別居・離婚によって子どもに会えない親、そして親に会えない子どもを救えるのかもしれない。

上條まゆみ(かみじょう・まゆみ)
ライター。東京都生まれ。大学卒業後、会社員を経てライターとして活動。教育・保育・女性のライフスタイル等、幅広いテーマでインタビューやルポを手がける。近年は、結婚・離婚・再婚・子育て等、家族の問題にフォーカス。現代ビジネスで『子どものいる離婚』、サイゾーウーマンで『2回目だからこそのしあわせ~わたしたちの再婚物語』を連載中。

デイリー新潮編集部

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