フランス当局が日本人妻に逮捕状 夫は東京五輪中に「ハンガーストライキ」で“連れ去り被害”を訴えていた
「どうにかして現状を打破できないかと試行錯誤しながら毎日を過ごしている」と彼は語った。毎朝6時には起き、海外や日本の子どもの人権について学んだり、自分と同じような目に遭った子どもの連れ去り被害者と情報交換する。10月からは、実効性のある離婚後共同親権・共同養育・共同監護などを掲げる「一般社団法人Children’s Rights Watch Japan」の活動も始めた。
収入は途絶え、貯金を取り崩しながらの心もとない日々だが、なんとか気力を保てているのは、必ずや子どもに会うという目標があるからだ。ストレスを発散し体力を維持するため、1日20キロものウオーキングも欠かさない。それでも、ふと気をゆるめると、涙が流れ出てしまう。
「妻に子どもを連れ去られてから3年4カ月。いまだ子どもには会えていません。どこにいるかもわからないし、生死すら不明なままです」
彼は不安げな表情でこう語っていた。
とうとう母国を動かした
ハンガーストライキの終盤、ヴィンセント氏を支える「子どもの権利のためのハンガーストライキ支援事務局」は、ヴィンセント氏の妻の代理人である弁護士宛に公開書簡を出した。
書簡では「本人の子への愛情は強く、子に再会するまではハンガーストライキを続ける」としたうえで、「最悪の事態が起こる前に、子どもたちをJR千駄ヶ谷駅に連れて本人に再会させてほしい」と依頼。しかし、妻も、妻の弁護士も、何の反応も示さなかった。
ストライキ中にヴィンセント氏は、フランス大使館を通じてマクロン大統領にコンタクトも取った。マクロン大統領は彼の訴えを受け、7月24日に行われた菅義偉首相(当時)との会談で、子どもの連れ去り問題に言及。その結果、日仏共同声明の中に領事協力として「両国は、子の利益を最優先として、対話を強化することをコミットする」との文言が盛り込まれた。続いて7月30日には、パトリシア・フロアEU駐日大使をはじめ、フランスやドイツ、イタリア、スペインなど欧州連合(EU)加盟国の駐日大使ら9人がヴィンセント氏を訪問し、連帯の意向を示した。
11月26日には、南麻布の駐日欧州連合代表部にて、パトリシア・フロア駐日EU大使と共同養育支援議員連盟会長の柴山昌彦議員、海江田万里衆議院副議長が、子どもの連れ去りや親子の引き離し、共同親権などについて会談を行った。
そして、飛び込んできたのが冒頭のニュースなのである。ヴィンセント氏は、このニュースを受けて、改めてフランス政府に「日本が法を守り人権を尊重してくれるように、また私の子どもたちを東京の家に戻してくれるように仲介してほしい」と要望を出した。だが、
ヴィンセント氏はこう語る。
「私は妻が逮捕されて欲しいと思っているわけではありません。ただ、子供に会いたいだけなのです」
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