「社内調達した妻」が義母の死をきっかけに憎悪を爆発… 48歳「不倫夫」に覚えた違和感

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どういう態度を妻に示せばいいのか

 それから5ヶ月ほどたつが、今、泉美さんはほとんど自宅にいない。彼女の母が住んでいた家に出て行ってしまったのだ。17歳になる長男は自宅にいることが多いが、15歳の娘は自宅と母親のもとを行ったり来たりしている。徒歩10分とかからない場所とはいえ、娘の気持ちが落ち着かないのではないかと仁史さんは心配だそうだ。

「長男が私を冷たい目で見ながら、『うち、一家崩壊かもね』と言っていました。話し合わなければいけないんでしょうけど、妻が見せた私への憎悪が忘れられなくて恐怖感があるんです」

 妻が自宅にいるとき、たまたま仁史さんが帰宅したことがある。妻は子どもたちと談笑していたのに、彼の顔を見るなり口をつぐみ、そのまま出て行ってしまった。それほどまでに憎まれているのかと落胆したという。

「そんなに怒っているなら、もっと前に言ってくれればよかった。家庭がごたごたしているから、つい私の気持ちは亜矢子に向かってしまう。ところが、なんとなく亜矢子が素っ気ないんですよ。聞いたら、妻は亜矢子の夫に『うちの夫とお宅の奥さんが浮気している』と告げたそうです。亜矢子はなんとかごまかしたと言っていましたが、『あなたのことは大好きだけど、こうやって第三者が出てくるのは困る』って。妻は第三者なのかなと思わずつぶやいてしまいましたが、亜矢子から見ればそうかもしれない」

 家事などあまりやったことのない仁史さんが、今は四苦八苦しながら洗濯や掃除をしている。ときどき、家中がピカピカになっていることがあるのは、パートの仕事が終わってから妻がやってきてきれいにしてくれているのだろう。

「私は今ここでどういう態度を妻に示せばいいのかわからないんです。妻に戻ってきてほしいという気持ちはありますが、戻りたくないならこのままでもいいとも思っている。ただ、どちらにしても私への憎悪をなんとかしてほしい。怒りをぶつけてもいいから憎まないでもらいたいんです。ずっと寛容に許してきてくれたのに、今になってとりつく島もないような態度をとっていることが、どうしても理解できない」

「妻を下に見たことなんてない」というけれど…

 もしかしたら妻自身もどうしたらいいかわからないのかもしれない。今まで我慢と思わないよう、自分の気持ちを見て見ぬふりをしながら、「妻と母」としての役割をきちんと果たしてきた泉美さんが、いきなり壊れてしまったのは我慢の限界を超えたからだろう。あふれ出る自分の感情を整理するための時間が必要なのではないだろうか。

 泉美さんが落ち着いたら話し合う余地も生まれるだろう。ただ、仁史さんが今までしてきたことを詫びなければ話は進まない。彼は「私は妻を下に見たことなんてない」と断言するが、話の端々に自分は身勝手な振る舞いをしてもいい、妻が許してくれるに違いないと思っていることが伝わってくるのだ。しかも、やはり彼が妻を女性として、ひとりの人間として大事にしているとは思えない。なにせ「社内調達した妻」なのだから。そこにも悪気はない、当時の社内の風潮だと彼は言うだろうが、そこに乗っかって“調達”された妻の心情を彼は想像したことがあるだろうか。

「怒ってます?」

 仁史さんは最後に私にそう言った。どこか肩身の狭そうな表情だった。「悪い人」でないのはよくわかる。ただ、悔い改めるなら今しかないことだけは自覚しておいたほうがいいかもしれない。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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