「社内調達した妻」が義母の死をきっかけに憎悪を爆発… 48歳「不倫夫」に覚えた違和感
あんたなんかに触られたくない――妻の怒り
今年の夏、泉美さんの母が亡くなった。80歳になったばかりだった。10年前に夫を亡くしてから、「気楽だからひとりがいい」とひとり暮らしを続けていた。
「妻はよく様子を見に行っていましたが、義母は元気でね、スポーツジムにも行っていたし友だちも多かった。だけどこのコロナ禍で去年からあまり外出もしなくなって、妻はとても心配していたんです。そのときも母親が電話に出ないから行ってみたら、リビングのソファで穏やかな顔をして寝ていたそうです。でも息がなかった。大動脈破裂でした。苦しんだ様子はなかったと」
だが妻は、ひどく落ち込んだ。前日の夕方、様子を見に行ったときは元気だったのに。いや、本当はどこか具合が悪いのに我慢していたのかもしれない。
「一緒に住んであげればよかった、もっと話を聞いてあげればよかったと後悔ばかりしていました。気持ちはわかるけど、一緒に住んでいても急に亡くなることはありますよね。なんとか慰めたいと思って、『でもお母さんは幸せだったと思うよ。ひとり暮らしは自分が望んだことだし』と言ったんです。そうしたら妻はキッと私を睨んで、『あなたの本性がバレたらお母さんがかわいそうだから、一緒に住めなかったのよ』と言い出したんです。これにはちょっとムッとしましたね。まるで私のせいで彼女の母親が急逝したみたいじゃないですか」
黙り込んだ仁史さんに、妻は吐き捨てるように「いい人ぶらないでよ」と言った。いつも穏やかな笑顔を向けてくる妻とは別人のような、眉間にしわを寄せた険しい顔つきだった。
「あなたはどうせ私のことを海外赴任のための家政婦くらいにしか思ってなかったんでしょ。帰国してからだって、ずっと他の人とつきあっていたし、今もつきあってるのは知ってるわよ。私はずっと蔑ろにされ、バカにされてきたのよ」
そう言って妻は手当たり次第に物を投げつけてきた。それらをよけながら、彼は妻のもとへ行き抱きしめた。急に愛おしくなったのだ。彼女が感情をぶつけてきたのは結婚してから初めてのことだった。
「だけど私は突き飛ばされました。『あんたなんかに触られたくない!!』と。妻は口汚く罵詈雑言を浴びせてきた。いつもの妻とはまったく違っていました。妻からはひたすら憎悪のビームみたいなものが発せられてきて、とても太刀打ちできなかった」
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