インバウンド不況で店舗減 「ラオックス」が始めたアジア食品店の意外なターゲット
「旅行気分を味わいたい」需要だけでなく…
ひとつにはまず、コロナで海外旅行にいけない人々の需要があると想定される。店内に並ぶのは、日本のスーパーマーケットや小売店ではまず見かけない商品が多い。店を訪れるだけで異国情緒が味わえ、楽しい。ライバルとしては外国食品を多く扱う「カルディコーヒーファーム」あるいは「ドン・キホーテ」が想定されるが、こちらはアジアに特化していないぶん、「亜州太陽市場」のほうが特色を打ち出せているように感じた。
上記の国々の商品のほか「亜州太陽市場」にはラオスのビール「ビアラオ」も置かれている。「亜州太陽市場」と取引しているビアラオの正規代理店・寮都産業株式会社の村松賢志代表は、同店について「“在留外国人のインフラ”になることも想定していますね」と、次のように語る。
「弊社ではラオスのほか、ベトナムやタイといったアジアの国々の食品の卸も手掛けており、日本国内で暮らす外国人の方々を相手にするお店とも取引をさせて頂いています。そうした取引先は、コロナ禍でさらに増えました。ベトナムの食品を扱うお店の数でいえば、これまで10軒ほどだった取引先が全国で300軒ちかくにもなったのです」
出国が制限されて帰れず、“母国の味”を求める人びとの需要がまずある。また、コロナで不振の飲食店から食品を扱う小売業に業態転換、もしくは食品販売でなんとかウイルス禍を乗り越えようという店が増えたことが、その背景にあると考えられる。
村松代表の会社の取引先だけを見ても、いわゆる外国人コミュニティ向けの店が、日本にこれだけの数あることに驚かされる。折しも岸田政権が、外国人労働者の受け入れを拡大すると報じられた。こうした外国人向け小売りの需要は今後ますます高まるはずで、それを大企業ならではの品揃えで応えるのが「亜州太陽市場」の狙いなのだろう。村松代表によれば、イスラム法にのっとって作られた「ハラル認証」食の需要は高いという。日本国内の生産だけでは、こうしたニーズに応えるのは難しいことだろう。
中国企業のスピード感
かつて化粧品会社の開発に携わっていた頃、ラオックスが大阪に「ラオックスビューティー」を新規出店するにあたり、取引をしたことがあった(この店舗もコロナで閉店してしまったようだ)。新規出店の話が立ちあがってから、わずか一カ月でオープンとなり、そのスピード感に驚かされた記憶がある。
免税店の不振を受け、まったく異なる業態の「亜州太陽市場」に挑むことができたのも、中国企業ならではのスピード感ゆえのものだろう。相次ぐ閉店も判断の速さと言える。万策を講じて新規ビジネスを始める日本企業との違いを感じた。
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